第120話 AVのスカウト
ドンペリを2人で開けるのって、けっこう大変だ。
私はすっかり酔っ払ってしまった。
「タケちゃぁ~ん、シャンパンって後からクルよねぇ。 もぉ飲めないよぉ~」
「そういえば、おまえあんまり強くねーんだったな。冷たいオシボリ持ってくるよ。」
「うん。バファリンも持ってきてぇ~」
「OK、ちょっと待ってろな。」
ふぅ・・・
本当に酔っ払ったぁ~
頭ズキズキするやぁ。
今何時なんだろう・・・
直樹、私が電話に出ないから心配してるだろうな。
直樹も私が電話に出ないと
死ぬ程不安な気持ちになったりするのかな。
どうなんだろう・・・。
はぁ~
なんかもぉどーでもいい。
いろいろ考えるの面倒くさいし疲れちゃったよ・・・
あーぁ~。
今日はこのままタケちゃんとHしちゃぅのかも。
あいかわらずタケちゃんの部屋はゴミタメなのかしら・・・
なつかしいけど
あの部屋に行くのは嫌だなぁ~。
てかぁ・・・タケちゃんとHするのもかったるぃや。
なんもかんも全部嫌だな・・・
このままここで寝ちゃいたい・・・。
酔っ払った頭の中で
そんな独り言を言っていた。
「すいません、ちょっといいですか? 自分はこういう者なんですけど」
黒いスーツを着た色黒の男に名詞を渡される。
頭の悪そうな話方でイラっとする。
「ん~ナンパお断りぃ~。あっちいって。」
いつもの要領で冷たくあしらい
ふと名詞に視線を落とすとプロダクションの名前が書いてある。
聞いた事もないようなプロダクションだから
どうせ胡散臭いAVなどの事務所だろう。
「グラビアに出てみる気ない? 脱がないでいいよ、水着とかセーラー服でさ」
「ふーん、 グラビアねぇ・・・。 どうせAVの事務所なんでしょ?」
「AVも確かにやってるけど、他にもいろいろやってるよ。
君はAVに出たら間違いなく売れるよ! もちろん単体だね!
飯島愛ちゃんみたいになってみたいと思わない?」
「ハァ~? AVなんて証拠に残るもんやるわけないじゃん。
飯島愛はバーニングのボスの気まぐれで出世できただけだよ。
AV女優からタレントになれるなんて世の中そんなに甘くなぃっつ~の!
それにねぇ、私は結婚控えてるんだから。」
結婚を控えてるなんて
自分で言って完全にしらけてしまう。
AVのスカウトなら今までも散々されてきた。
スカウトの男は必ず『飯島愛』の名前を出すけれど
そんなのに釣られるのは
おのぼりさんか、よっぽどの世間知らずだけだろう。
AVに出る女は本当のバカだと思う。
援助交際や風俗なら
稼ぐだけ稼いで足を洗ってしまえば
後はそ知らぬ顔で生きていけるけれど
AVなんて出たら人生おしまい、お先真っ暗だ。
うぅ・・・
頭痛いなぁ・・・。
タケちゃんまだかなぁ・・・。
「AVもバレないようにいくらでもできるんだよ!
SEXもしないでいいし、 君なら5本で一千万くらい出すけど。」
男は大袈裟な身振り手振りで熱心にそんな話を延々と続け
私はなぜかその話を聞き続けた。
いつもなら絶対にこんな風に話を聞く事はなかったと思う。
お酒に酔っていたのもあるけれど
自分でもなぜ電話番号を教えて
その気があるような事を言ってしまったのか説明がつかない。
自分の意思だとは到底思えないし
口車に乗せられ、流されたわけでもない。
それがどういう事なのか
私はちゃんと理解していたはずだ。
この頃の私を動かしていたのは意識ではなく無意識だ。
私の内面は完全に真っ二つに分裂してしまった。
幸せになりたいという強い願望が反転してしまったのだろうか。
心の闇の一番深いところから
私の足を掴んで離さない自己破壊的な無意識に
またも私は翻弄されていくのだった。
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