第234話 言い訳
「捨てるのはもったいないかな・・・
これだけ使い切ってやめようか? ねぇ?」
私は
スピードを目の前にして
もはや抗えない程の強い欲求を感じていた。
ユウはリモコンを指先で弄びながら
ソワソワと体を動かすだけで返事をしない。
「とりあえず、やっとく? ねぇ?」
私は言った。
ユウがちらりと私を見た。
返事を待たずに
小走りでキッチンに行き
カウンターの引き出しから
アルミホイルとストローを取り出した。
早く体の中にスピードを入れたい。
早く、早く、早く・・・。
焦ってアルミを折っていたら
失敗して破けてしまった。
「ちっ」
舌打ちして
アルミホイルをもう一枚引き千切る。
5分後、私達は
スピードをキメていた。
忘れていた感覚が
すぐに蘇ってきた。
「あっーーー! これこれ!
このパキっとするかんじ、たまんなぃなぁ!」
続けざまに何服も吸う。
ふぅー、とスピードの煙を吐き出すたびに
全身に力が漲ってくるのを感じる。
久しぶりのスピードは最高だ。
体はシャッキリ!
気分はスッキリ!
「なんかドラッグってやっぱり悪いものじゃないと思わない?
価値観の違う世界が開けるってかさぁ~
今まで一つだと信じきっていた世界は実は一つじゃなかったって
それを理屈じゃなくて体感でわかるんだもん。
ドラッグは精神世界へのパスポートなんですよ!」
毎度のことながら絶好調になった私は
自分の精神世界観を自分自身に語りかけるのに忙しく
この一ヶ月の事は頭の片隅からも追いやって
すっかりドラッグ擁護派の立場に戻ってしまっていた。
外の寒さとは裏腹に暖められた部屋。
そしてもっと熱いユウの身体。
何十時間もユウと絡み合いながら
ありえない快楽を貪り続けた。
「ちゃんと一ヶ月止めれたのだから、いつでも止められる」
「一ヶ月抜けば、ちゃんと元通りの自分に戻れる」
「なきゃないで、全然問題はない。 あるから、やってしまっただけだ」
ドラッグを使用するために
あらゆる理由と言い訳を積み上げて
不安要素は全て無意識の側に抑圧していった。
警察にパクられるという不安は遠のき
手元には300万のキャッシュがある。
ユウとの関係も一段と温まり
私達はすごくうまくいっている。
何も怖いことはない。
全ては私の思うままだ。
そんな傲慢な自信さえ持ち始めていたのだった。
はいはい、やっぱりこうなりましたよ・・・。 これが覚醒剤のリアル。
経験者は99%くらいは、目の前にネタがあったら抗えないんじゃないかな。
結局ね、意思とか決意とか意味ないのよ。 脳の問題。 脳が欲しがるから理由は後付なの。
本当怖いよな。 これでも当時の本人は依存している自覚は皆無・・・。 やれやれだ。
続きを読みたい人はクリックしてね
携帯らぶどろっぱーはこちら![]()