第244話 不安の通過
考えが焦点できないほどに意識が乱れ
混沌とした感情が涙と一緒に噴出して
どうにかなってしまいそうだった。
どれくらい泣いていたのだろう。
廊下で丸まっていた私は
ようやく半身を起き上がらせた。
玄関から入ってくる隙間風のせいで
手足は冷え切って棒のように固まっていた。
泣き疲れてリビングに戻ると
もう一度自分の選択について考えを巡らせ始めた。
精神崩壊したユウを目の当たりにして
私は一心不乱に神様に祈った。
「ユウをもとどおりにしてください、私に罰を与えてください」
心の底から真剣にそう祈った。
ユウが正常な状態に戻ったと認識して
私は別れを決意した。
極端な決断だったのかもしれないけれど
それが見合った対価に思えたからだった。
ユウを見送るまで必死に自分を保ち
最後にもう一度「ユウが立ち直りますように」と祈った。
けれど
私の決意は早くも揺らいでいた。
心の中に広がってゆく孤独感と虚しさ。
どうしてもユウと離れたくはなかった。
今まで築いてきたものが失われてしまうことが怖い。
一人ぼっちになるのはさみしい。
ユウに執着する気持ちはどんどん膨れ上がっていく。
もう一緒にいたらいけないのだろうか・・・
諦めるしかないのだろうか・・・
本当にそれがユウのためになるのだろうか・・・
勝手にそう決め付けているだけで
それすら私のエゴなのではないだろうか・・・
なにも別れる必要はないのではないか・・・
二人で寄り添いながら成長していけばいいのではないか・・・
一人になるのは嫌だ!
ユウの手を離せば私は幸せの指標を失ってしまう!
絶対に別れたくない!!
それが私の本音
正直な気持ちだった。
ズルをしてでも
自分のいいようにしたい。
いざとなると
いかにも正当な理由をこじつけて
結局は楽な道を選んでしまう。
いつでもそうしてきた。
自分のことばかりを考えて。
だけどさっきまでの私は
自分のことよりもユウのためを想っていた。
それは揺ぎの無い真実だ。
もしもそれが「愛」だとするならば
私は確かに「愛」の只中にいたのだと思う。
そしてその時
自分の力量を超えて
大いなる手に導かれているように感じた。
「愛」だとか「神様」だとか
今まではただ抽象的な概念だったものが
私の中で立体的に造形され色付き始める。
感覚的なものだけれど
すごく確かなものに思えた。
それは
外部に見出したのではなく
内側から沸きあがってくる揺るぎない何かだった。
ユウをこれ以上振り回すことは出来ない。
あんなに無理をさせていたのだから。
この先
私の努力によって
ユウを振り回すことなく
付き合いを継続せていくことが出来るだろうか。
私は自分の性質を熟知している。
何をしても刺激的なのは最初だけで
ますます強い刺激を求めてエスカレートしていく。
欲望に歯止めがきかない。
自分の欲望の正体を突き止めたい。
それはどうしようもない私の本質に思えた。
こんな自分を変えたいけれど
それよりもまず
私のせいでユウまで不幸の道連れにすることだけは許されない。
もうこれ以上は。
今更かもしれないけれど
私はそのことを受け入れなければならないだろう。
哀しいけれど
ユウのことを想うならば
別れを選択するべきだ。
あれこれと想いと交錯させることを中断し
さっきまでの綺麗な気持ちを取り戻したいと思った。
静かに意識を沈黙させてみる。
大切に想っていたのは何だろう・・・
大切なものの優先順位は・・・
建前ではなくて
奇麗事でもなくて
見栄もはらず悪ぶりもせず
正直な自分の想いに耳を澄ませる。
決めなくてはならない。
ユウを失うことは
身を引き裂かれるような耐え難い絶望を受け入れること。
だけど
それを受け入れられなければ
きっと私はいつまでも変われない。
ここから先には進めず
また同じようなことを繰り返してしまう。
ああ!
だけど! どうしても手放したくない!
ユウだけは自分のものにしておきたい!
迷いの森を彷徨いながら
思考はぐるぐると同じところを巡った。
想念の渦にとらわれずに
具体的に現実に取り組むしかない。
絶望から逃げださずに
背負うべきものを背負うだけの強さが欲しい。
私は一人きりで
大いなる不安に対峙しようしていた。
虚無の深い淵に立ち止まる。
一切を破壊してしまうような裂け目が口を開けている。
降りかかる厳しい現実を
勇気をもって引き受けられるだろうか。
また涙が溢れ出す。
胸にひしひしと迫る圧迫感。
浅い息継ぎを繰り返す。
苦しくて苦しくて堪らない。
今まで決して踏み出すことが出来なかった一歩。
私はギリギリまで追い詰められていた。
前に進みたい。
そこに沈みゆく闇がいかに深くても
清い一歩を示そうと覚悟を決めた。
そして
不安の通過が何をもたらすのか
私は始めて知ることになった。
続きがあるんですけど長すぎたので二回に分けます。
内面の描写は難しい。 主観的な感覚をどう表現すればいいのか苦戦。
ここは、私の人生において、すごく大切な局面で
私のとった行動よりもどういう気持ちでのぞんだのかが重要な部分です。
同じことをするのでも、思い一つで天と地ほどの差があるもんね。
次回はらぶどろっぷ中盤の核の部分かなぁ。
とても書くのに難攻してます^^; 下手糞な文章で本当ごめんなぁ。
あとユウとの別れについてはきちんと書くから憶測でコメントしないでね☆
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