第108話 別れの時 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第108話 別れの時

私の告白を

直樹は「喜んで!」と

満面の笑みで受け入れてくれた。


今日はお昼から用事があるから夜にまたデートしましょう、と約束をして

直樹にはひとまず帰ってもらった。


直樹との交際を始める前に

パパとの関係に決着をつけなければならない。


直樹とは2年くらい同棲をして

私が二十歳になったら結婚しよう。

そんな明確な未来予想図が私の頭の中にはすでに描かれていた。


それにしても直樹の話で心底驚いた事がある。

サラリーマンのお給料の事だ。


手取りで16万、

家に毎月3万円のお金を入れ

そこから毎日のお昼台や煙草代、ガソリン代なんかを引くと10万円も残らないそうだ。


お金の心配はこれから出てくるのかもしれないけど

今の私にはパパからもらっていた毎日の10万円が貯まりに貯まって

1千万近い現金が寝室の花瓶の中にキャッシュでそのまま隠してある。


1千万あれば当面、お金に苦労する事はないだろう。


このマンションは当然出ていかないといけないだろうけれど

お金まで返せなんて言われたら困ってしまう。


パパはどう出るだろう・・・。


別れると決まれば

態度が一変する可能性は充分にあるし

うまく話しがまとまるといいけど・・・

と、私は不安な気持ちを抱えたまま

いつのまにか眠っていた。


夕方、パパは無表情で部屋に入ってきて

ドカっと勢いをつけてソファーに座った。


不機嫌なかんじはするけれど

怒り狂っている様子ではないので

私はまず、しおらしく謝ってみる事にした。


「パパ・・・。ごめんなさぃ。」


俯きながら小さな声でそう言い、パパの言葉を待つ。


「男って誰なんだ?」


「あぁ、ううん。昨日ね、たまたま知り合った冴えない男よ。」


「そうか・・・。そいつと付き合う気なのか?」


「まさか・・・。そんな気はサラサラないけどさ。でも、私ね、もう普通の生活に戻りたいんだ。

パパの事嫌いになったわけじゃないよ! でもね、全部リセットしてやり直したいんだ。」


「そうか・・・。おまえ、金はいくら貯まったんだ?」


「・・・。えと、300万くらいはあるかな?たぶん・・・。」


「そんなに少ないわけないだろ?正直に言ってみろ。」


「・・・お金は返せって事?」


「まりも、極道なんてな、この年になると女に格好つけれてなんぼなんだよ。

1ヶ月やるから、自分で部屋を見つけて出ていけ。

家の中のものと金はおまえのもんだ。」


「・・・うん。 本当にいいの?」


「俺はな、おまえとの時間を買ったんだよ。

極道は立場が上になればなるほど、

どんな女を連れて歩くかってのは自分の格に繋がる世界なんだ。」


「うーん、若くて綺麗な女を連れて歩きたいっていう男の心理?」


「おまえさ、背中がパックリあいたドレスとか腰までスリットが切れ上がってるスカートとか

そんな服どこで買ってくるんだよ?って格好がよく似合っていたしな。

一緒に歩いてる時に男の視線を一身に集める女を連れて歩くってのは

男としては最高に悦に入れる瞬間だ。

自分に自信と誇りが持てる。

くだらんかもしれんが、そういうもんだ。」


「私も、パパと一緒に歌舞伎町を歩くのが大好きだったよ。

歌舞伎町のボスの女でいれるなんて私っていい女なのね!ってすごい優越感だったもん。

私達、お互い同じ様な気持ちだったのかな?

でもさ、パパ、それって愛じゃないよね?」


「愛か・・・。じゃあ、おまえは俺がおまえを愛していなくて、春子の事を愛してたと思うのか?」


「うーん。そうだな・・・。うん、そう思う。」


「そうか、おまえは愛って何だと思ってる?

俺はおまえの事を本当にかわいいと思っていたよ。

わがままで気まぐれで物怖じしないジャジャ馬なとこが気にいってた。

子猫ちゃんというよりは虎みたいな女だったと今では思うけどな。はははは」


「愛って何だろうね・・・。

パパは春子さんの事を裏切っていたわけだから愛してないのかな・・・?

でも・・・いつかは春子さんのとこに戻るでしょ?

だからやっぱり愛してるのは春子さんなんだよ!

私さ、春子さんを見て思ったんだよね。

きっといつかは捨てられるって怖くなっちゃったのよ。」


「おまえはまだ若いから分からないかもしれないけど、愛人が一番愛されるんだぞ?」


「ふーん。でも愛人より、私は奥さんになりたいや。

今は18歳だけど、これからどんどんおばちゃんになるんだよ!

女なんて大事にされるのは若いうちだけだもん。」


「おまえがそういうタイプだとは思わなかったよ。

まぁ、女ってやつは若い頃は誰でも結婚に夢を見るもんなんだろうな。

その夢に敗れた時には俺がまた引き取ってやるからな。ははは」


「パパって本当に良い人ね・・・。

はぁ~・・・

なんかヤクザと別れる時ってさぁ、すごく揉めるんだと思ってた。」


「別れ時に揉めるのは若さの象徴だ。

ヤクザって言ってもピンキリだろ。

チンピラにだけは引っかかるなよ? おまえ、そのときは痛い目にあうぞ。

なんかあったらいつでも連絡してこい。

飯でもまた食いに行こう。おまえの好きなキャッスルのハンバーグでもさ。」


私はなぜかとても悲しくなって大粒の涙をこぼしていた。

嘘泣きなんかじゃない、本当の涙だ。


でも、何が悲しいのか、これがどういう感情なのか解らない。


「パパ・・・最後にHしようよ。」


私がパパに出来るお礼なんてそのくらいしかないと思い

涙を拭いながらパパをベットに誘った。


私はこの時

はじめてパパと本気で抱きあった。


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