『まりもの摩訶不思議な世界へようこそ』第5版を10名の方にプレゼントします。

1つだけ条件があります。読まれたら貸出用に使うか、大切な人に差し上げてください。

病院を辞めて専業主婦になった私が、全神経を集中して自費出版した貴重な本です。

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今年も残すところ3ヶ月となりました。

なにか起こるんじゃないかと不安の気持ちで生きるのではなく、1日1日を噛み締めるように大切に明るく生きたいですね。

私はこのお話を読んでアジアユーリンヘルスネットワーク東京大会の時、韓国から参加された方のお話を思い出しました。

この方は山の中に住み自給自足の生活をされていて、怪我の時も病気の時も尿がとても役に立っているというお話をされました。

特に怪我をした時にすぐに尿で消毒すると治りが早く、きれいに治ると仰っていました。

肉体だけではなく精神も充実して魂の進化に繋がると感じました。

尿健康法の普及がやめられない理由だと感じています。合格


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蝉時雨の頃

僕は小さな時から父をとても尊敬していた。
大きくなったら父のようになりたいと子供心に決めていた。なにより男らしかった。
威厳があるだけでなく、がっしりと大きな体で家族全員を包容し心から愛してくれていることが分かった。

僕の家は昔からこのあたり一帯に住む一族の本家だったらしく、地元の有力者たちがいつも父のご機嫌伺いに訪ねてきていたが、頭を下げているのを見たことがない。
うまくあしらい適当に付き合っていたようだ。

そんな父だったが、ある日、小柄で痩せて質素な身なりの人物がふらりと現れたときのことを、僕はよく覚えている。
やりかけの仕事を放り出し自分でその人の足をすすぎ、奥座敷へ通して何やら話し込んでいた。
その人が帰ってからも、父はその日一日中いつもより機嫌が良かった。
母だけが緊張していたようだった。

僕は地元の中学を卒業すると上京し、高校、大学と東京で暮らしていた。
卒業後は地元代議士の秘書として経験を積んだ後はその議員の後釜として出馬すると、父から言われていた。僕もそのつもりでいた。
後は卒論の提出だけを残して久し振りに学生生活の最後の夏休みを過ごすために帰郷していた。
その人のことはずっと忘れていたが、縁側に腰掛けて油蝉の大合唱を聞きながら蒼い山並みを見つめているうちに、ふと思い出した。あれは誰だったのだろうか?

夕食を食べながら父に尋ねた。

「ああ、覚えていたのか。あれは私の兄だ。腹違いのな。体が小柄だったから戦争には行かずにすんだが、終戦後まもなくして私に全て譲るから後は頼むと言って山に篭もってしまったのだ。おまえは知らないだろうが、戦後は何もかも、日本人の価値観がすっかり変わってしまったからな。多くの友人も帰っては来なんだ。兄にも心に期するものがあったのだろう」・・・・。

あれは僕の叔父さんだったのか。

それからは何故かむしょうにあの人に会いたくなった。
ここでごろごろして体を鈍らせるより山歩きでもしたほうが健康にもいいだろう。
そんな気持ちを父にも打ち明けトレッキングの仕度をした。
父も居場所は知らないようだった。
少し前に見かけた猟師の話では、猿とも見紛うようなすばやさで尾根を駈けていったそうだ。

僕は1週間分ほどの食料をリュックに詰め不確かな地図を頼りに出発した。
たいした高さの山ではなかったし自分の家の裏庭でも探索するつもりだったのだが、
一人での山歩きは意外ときつかった。
体力には自信があった。すでに三期生に譲ったが、この間まではアメフトのレギュラーメンバーだったのだ。が、三日、四日と彼を見つけ出せないいらだちと疲労感に、僕は危険なものを予感し帰ることにした。
そして獣道を下山しようとして濡れた木の根に足を滑らせて沢に転落したのだった。

気がついたとき、僕はてっきり自分は死んで天国に来ているのだな、と思った。
今まで聞いたこともない美しい笛の音が聞こえてきた。

草陰の間からウサギやリスや狸たちが、木々の枝には小鳥たちが、うっとりと笛の音に耳をすませているのが見えた。
僕は小枝で編んだ長椅子に横たわっていた。
首をゆっくりとまわした視線の先に、あの人が目を閉じたまま横笛を奏でている画像が映った。

「・・・・・叔父さん」と僕はかすれた声を出した。

笛の音が止み、動物たちが僕の気配に気付いて急いで帰っていった。

「大きくなったな」

懐かしそうな声だった。

僕は体のあちこちに痛みを感じた。
僕は死んではいなかった。気を失っていただけだった。

「叔父さんが助けてくれたんですね。」
「おまえが山に入ってからずっと見守っていたよ。わしに会いたいと思ってくれた時から知っている。すぐに出迎えてやりたがったが自然の素晴らしさ、またその反面の怖さも知ってもらいたかったのでな。」

「叔父さんは何でも分かってしまうんですね。僕の気持ちも読めるんですか?」

「感じるだけだ。人の気持ちも動物たちの気持ちも。
木々や草花、大地の気持ちも感じるよ。
思えばどんなものの気持ちも感じることができる。」

「木や草にも人間と同じように気持ちがあるんですか?」

「あるとも。同じではないがみんな気持ちがある。それは人間以上に純粋だ。
ただ、あるがままを受け入れ摂理のままに生きている。」

「人間が一番堕落しているのですか?」

「人間が一番進化しているのだから、本来は他の生物の手本となるような生き方をしなくてはいけない。どこから見ても恥ずかしくないようにならなくてはならんな。」

「少し腫れてしまったか、どうれ。」


叔父さんは僕の体を点検するように見回すと、両手を何度も擦り合わせその手のひらで僕の痛む場所を包み込むようにした。
とても暖かくて気持ちが良かった。しばらくすると痛みがだんだん消えていく。


「まあ、今日はじっとそうしておれ。明日には歩けるようになる。」

突然のいろんなことで忘れていたけれど、落ちついてみると僕はおなかがすいていた。
リュックを引き寄せようとする僕の手を押さえ、

「そんなもんは食えんぞ。これから体にいいものを作ってやるから、ちょっと待て」

叔父さんは、すすで真っ黒な鍋を火にかけ芋やきのこと野菜のような葉を煮始めた。

大きな岩がせり出して屋根代わりになっている小さな洞窟のような住まいだった。
床には藁のような枯草が一面に敷き詰められていた。
丸太が組まれただけの天井から吊るされた鍋がことこと音をたて僕たちの夕食が始まった。

「叔父さんはどうして山に入ってしまったんですか?」

聞いてはいけない質問のような気がした。
でもこのことが聞きたくてここを訪ねてきたようなものだ。思いきって聞いてみた。


「そうよなあ・・・・」

叔父さんは遠くを見るように顔を外へ向けた。空は朱色に染まっていた。

「あの頃のことはなかなか一言では言い尽くせん。
ただ、一つだけはっきりしてしておったことがある。それはなあ、
戦争に負けたことでそれからの日本人が辿る道が、わしには見えておったと言うことじゃ。
アメリカさんの文化はモノ文化じゃ。
アメリカから便利がどんどん入ってくるとそれに慣れて横着になっていく。
道具ばかりに頼り過ぎていくと本来もっている能力を失っていくのじゃ。
さらにモノの豊かさだけを追い求めるようになって精神性を喪失する。
わしはそれが怖くてな。自分だけはそんなもんにはなりたくないと山に入った。」


「一人で寂しいと思ったことはありませんか?」

「初めのうちはな、そりゃ寂しかった。もう止めて帰ろうとも思った。
だがな、この静寂の中に身を置いてみると一人ではないことが感じられるようになる。
草も木も風もせせらぎの音も、大地までもが呼吸し生きているのが分かるようになる。
この自然と一体だと感じられるようになったときから寂しさはなくなった。」


「不自由だと思ったことはありませんか?」

「一番不自由なのは、この体の鈍重さじゃな。
意識だけならもっと自由に動けるのだ。わしもまだまだ修行が足りんのじゃ。」


「そうなればどんな不思議な術でも使えるのですね。」

「そうだ。だが、べつにこの力は特殊でも不思議でもない誰しもが持っている力じゃ。
もちろん、おまえにだってあるぞ。」


「僕だって修行すれば出来るんですか?」

「出来るさ。誰にでも出来る・」

「じゃあ、僕をしばらくここに置いて修行の仕方を教えてください。僕も術を身に付けてみたい」



「人にはな、人それぞれに持って生まれた使命というものがある。
人生とはその使命を捜し求める旅なのだよ。
明日はもう歩けるだろうから、さっさと山を降りて家に帰れ。
イエス様はこう仰った。”世俗に生きよ、世俗の人となるなかれ”とな。
意味が分かるか?おまえはいずれ政治家として日本の為に働くために生まれてきた。
世俗、それも一番生臭い政治の世界で、常に志を高く、身を清く保って世俗の垢に染まらず
信念を通すことは、ここで修行するより辛いことだぞ。出来るかな。」

僕は夜明けを待って、まだ少しは痛む足をかばいながら山を降りた。
道すがら昨日のことを繰り返し繰り返し思い出していた。

今まで精神的にも物質的にも何一つ不自由のない人生を送ってきたつもりだったのに、
それは自分の知っている小さな世界の中しか知らなかったからだったのに違いない。
未知の世界に向けて1歩踏み出したような気がした。
相変わらず油蝉が地を揺らすように鳴いている。おしまい  

癒しのための短いお話たちより



「ひとりごと ぶつぶつ」 矢国タテル著
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