登場人物
イリーナ：ウクライナ人の転校生。
アイノ：同じクラスの友達
28.音楽アプリ
秋学期から2年生クラスに転校してきたウクライナ人のイリーナはいつも優等生ぶっている。僕が教室で粘着タック(僕はくっつけるマジックと呼んでいる)を拾うと、イリーナが急にどこかからやって来て僕の手をぴしゃりと叩いた。僕が驚いているすきにイリーナは僕からくっつけるマジックを奪い、先生の所に持って行った。僕が盗むと思ったらしい。僕だって先生に渡すつもりだったのに。何だか悔しい。そんなイリーナと音楽の授業でグループが一緒になった。タブレットを使ってメロディーを作る授業だった。同じグループにはイリーナの他に仲良しのアイノもいた。タブレットには音楽アプリが入っていて、ドラム、ギター、ピアノなどの中から自分で好きな楽器を選び、楽譜を作ってメロディーを作ることができた。僕はピアノを習っているからアイノに自分の好きな曲を弾いて聞かせた。すると、「私も、私もその…習っている。あの～」とイリーナが話しかけてきた。「ピアノ？ピアノを習っているって言いたいの？」と僕が聞くと、「そうそう！ピアノ！私もピアノを習っています。」とイリーナは笑った。フィンランド語がすぐ出てこないのは僕にもよくある。イリーナもピアノを習っているのか。意外な共通点発見だ。それからはイリーナとも少しずつ話すようになった。