登場人物(友達紹介)
・アラン:一番仲良しのクラスメイト。2年生。
・ファジル:クラスメイト。2年生。
第二章 12月
1.宿題忘れた!
算数の宿題を忘れてしまった。言い訳を言うと、宿題のページを間違えてしまったんだ。やらなければならなかったのが右のページ。僕がやったのは左のページだった。初めての宿題忘れ。後からお母さんに聞いたんだけど、宿題を忘れると親にメールが届くらしい。2回連続で忘れると、居残りで宿題をすることになる。次の日はきちんとやっていったから居残りは免れた。
フィンランドの3年生の算数は掛け算だからとても簡単だ。ただ日本と式を書く順番が違う。りんごが10個入った袋が6つあります。全部でりんごは何個でしょう。という問題は6×10と書く。日本と逆だ。記号も×ではなく・で書く。転入して数字ばかり勉強していたせいか、数字を見るとフィンランド語の数字がパッと頭に浮かぶ。ときどきそれは日本語の数字より速く頭に出てくるようになった。残念ながら英語の数字は思い出すのに時間がかかるようになってしまった。
算数よりも問題なのはフィンランド語の宿題だ。感情表現の授業が始まって、急に宿題が難しくなった。例えばMinä suutun(ミナ スートゥン=私は怒る)をMinua suututta(ミヌア スートゥッタ=私を怒らせる)に変えて、Minua suututta, kun näen kiusaamista.(ミヌア スートゥッタ クン ナエン キウサーミスタ=いじめを見た時、私は怒る)というような例文を作る宿題だ。フィンランド語では「私は怒る」を「私を怒らせる」と表現することがあるらしい。これはお母さんに助けてもらわなければならなかった。お母さんが持っているフィンランド語の教科書がとても役に立った。僕にはフィンランド語で書かれた質問文も理解するのが難しい。いつもお母さんのスマートフォンのカメラ翻訳のアプリを使っているけど、たまに変な日本語に変換されるし、まだ習っていない漢字も出てくるしで一人で宿題をするのはかなり難しい。でも、最近フィンランド語が少し分かってきているのかなと思うことがあった。お母さんに「今日の休み時間のサッカーに高学年が勝手に入ってきて、ルールもめちゃくちゃで本当に面白くなかったんだよ。ファジルとアランと文句言いながら教室に帰ったんだ。」なんて話をすると、「友達と何語で文句言い合ったの?外国語で文句言い合えるなんてすごいじゃん!」とお母さんが言った。あれ?友達と一体何語で話していたんだっけ?ファジルもアランもそんなに英語ができないからフィンランド語で話したんだっけ…意識していなかったけど、僕はフィンランド語で友達と文句が言いあえたらしい。アランと僕らのチームでサッカーのファールを取るか取らないかについてけんかになりそうな事もあったけど、僕が仲裁したことがあった。僕はあの時もフィンランド語で仲裁したのか。自分でやったことを後になって思い出してびっくりした。