第69回江戸川乱歩賞受賞作

息つく暇など、一切なし!

 

 

大正13年、鳥取県。

田中古代子(タナカコヨコ)はシンママ。娘の千鳥と一緒に鳥取駅の改札を出て、活動写真「探偵奇譚ジゴマ」を見に鳥取座に向かう。

 

大怪盗ジゴマを楽しみにしている千鳥は小学2年生。活動写真の途中で火事が発生し、古代子と千鳥は逃げる途中、ジゴマが現れ観客の男を刺し殺すのを見てしまう。続けて刺されると思い必死で逃げる。危なかった‥

 

千鳥が言う「私と母ちゃんは名探偵で、ジゴマと戦うんだよ!」

 

千鳥の担任教師が死体で見つかる。古代子の内縁の夫・涌島は社会主義者の革命闘士。ふたつの殺人はアナキストの内部闘争の事件と見る。

 

犯人が自殺、古代子は納得できず真犯人をさがし追い詰めますが‥

 

 

関東大震災後の不安定な社会情勢、無政府主義の台頭と警察の締めつけ強化という激動の時代、地方の村の古い価値観の息苦しさから脱出しようと試みる母娘。シンママと内縁の夫という関係は、今でも風当たりが強いですし。

 

新しい女の潮流に乗り平塚らいてうや与謝野晶子を追い、同人誌に投稿するうち新聞社から連載依頼がきて東京へ出る。田中古代子は実在した女流作家とのことです。

 

巻末で江戸川乱歩賞選考委員のひとりが「まったく楽しめませんでした」と選評されていますが、いえいえ興味深く楽しく読みました。

 

シンプルでわかりやすい表現、簡素な新聞記事のような文章、小説というよりルポルタージュみたいで、的確に背景や人物が描写されています。

 

出だしからぐいぐい引き込まれ、テンポ良く話が進んでいきます。後半からなんとなく散漫になっていくのが少し気になりました。意表を突くようなトリックでなく、サスペンス風のストーリーが特徴かもしれません。