端麗な文体と人間性の深い洞察
芥川龍之介は代表作を持たない作家である。
12編の作品集です
1,大川の水
川にまつわる思い出を綴るエッセイ
2,羅生門
強欲老婆を成敗する正義面した男の悪党ぶり
3,鼻
高僧なのに自分のビジュアルがいやでじたばた悪あがき
4,芋粥
お腹いっぱい芋粥を食べたいけど食べきれないほどの芋粥にうんざりする男
5,地獄変
地獄変の屏風を描く絵師は自分の愛娘が焼かれる炎熱地獄に絶望
6,蜘蛛の糸
人を蹴落として自分だけ這い上がろうとしてもダメ
7,奉教人の死
長崎の教会に仕える美青年に恋した娘が妊娠その美青年は実は女だった
8,蜜柑
客車の席に座った田舎娘は窓を開けると見送りの弟達に蜜柑を投げた
9,舞踏会
鹿鳴館の舞踏会で伯爵令嬢は仏蘭西の海軍将校と踊りあかす
10,秋
姉は妹に従兄を結婚相手として譲り別の男性と結婚するが悶々とする
11,藪の中
山中で盗賊に襲われた夫婦だが3人の言い分が食い違う
12,トロッコ
少年は土工にトロッコに乗せてもらい帰りは大変な思いをする
表紙のイラストにびっくり仰天しそうな芥川龍之介の短編集。え?なんでこの絵と思ったら、地獄変の屏風を描く絵師が「鎖で縛られた人間が見たい」と弟子に鎖を巻き付ける変態チックなシーンのようです。
巻末に北方謙三さんが「何人かの作家の文章を書き写すトレーニングをした」そうで「芥川の文章には才気のきらめきがあって‥」と書いておられます。文章のきらめき!そう、きらめきがあるんです。
辰年辰月辰日辰刻に生まれて、龍之介と名付けられたとのこと。
文豪の小説でも短編なので手軽に読めます。激しい業火に苦しむ非日常と、列車の中で見たささやかな日常、どちらにも魅了されます。

