芥川賞受賞作家・高樹のぶ子さんのオカルトファンタジー

 

 

薬師寺の非正規職員として、ご縁と推薦とコネで1年前に雇われた明日香は絵馬を売っている。願い事の書かれた絵馬をちらりと見ると「母は殺された」と書いてあった!

 

明日香の父は崖崩れで亡くなり、母は他県で単身赴任中。ひとりで住む古い自宅から自転車通勤しています。

 

職場のチーフの弥生さん

自宅向かいの畳屋の繁さん

家の前のクスノキに住むカラスのケイカイ

 

ケイカイとは言葉が通じる気がする明日香の愛読書は『日本霊異記』オカルトみたいな話が100以上入っていて、古い地名の不思議さにわくわくするのだ。

 

高校時代の地理の川津先生も『日本霊異記』の熱心なファンで、怨霊信仰と言霊信仰や鬼と人間の違いについて語り合う。

 

『キケンな地名ハンドブック』という読んで幸せになる本ではないのに買ってしまった明日香。本が「早く買ってよ」とささやいたから。

 

明日香が転んだ時、助けてくれた清潔感のある好青年・岩島さんと一緒に、行方不明の女の子モモちゃんを捜します。雷神が連れ去ったのかもしれない。菅原道真の雷神、イザナミの体に湧いた八つの雷神、つまり雷なのだ!

 

明日香の母から「夢ほどき」を頼まれたという男が訪ねてくる 夢の意味がほどけたというが‥

 

 

マイルドなオカルト、辛口ファンタジーのようなストーリーです。

 

地名オタクの明日香と岩島さんの微妙な距離感、恋愛のようなそうでないような関係。登場人物が少ないぶん、みっちり丹念に気持ちの揺れ動きが描写されていて、緻密な表現に引き込まれました。考えや思いは一直線に動くのでなく、あれこれ迷いながら落ち着くべきところに落ち着いていくようすに安心しました。