善い人ばかりが住むと評判の長屋

心揺さぶる人情時代小説

 

 

気持ちの良い善人ばかりが住むという「善人長屋」の差配の娘・お縫(ヌイ)は、うっかり人違いで錠前屋の男・加助を入居させてしまいます。加助は恐ろしいくらいのお人好しだったのです。

 

善人長屋の実態は、善人どころか裏稼業の悪党ぞろいです。

・安太郎は小間物売りで裏はスリ稼業

・唐吉文吉兄弟は季節物売りの美人局

・庄治は下駄売りの裏は空巣

・浪人は代書屋で偽の証文作り

・蚤の夫婦は煮豆売りの詐欺師

・爺は鍛冶屋の火事屋 

・髪結床は情報屋

 

まっとうな表稼業の裏の本当の姿を、新入りの加助に悟られまいと苦心します。

 

善人の加助は、困っている人をほっておけなくて、なんとか助けようと善人長屋の住民たちの力を借りて、人助けしようとします。が、善人長屋に住む悪党たちにとって、人助けは迷惑でしかなく、禍なんです。

 

自分のキャパ以上の善行をしようとして、結果、周りに迷惑かけてしまうタイプかも。悪気はないとはいえ、読んでいるうちに、加助は本当に善人なのか、裏の裏の顔があるんじゃないかとか勘ぐってしまいたくなります。

 

非の打ち所がない天性の善人なのか、どうなんでしょう。最終章で明らかになります。火事ではぐれ、やっと再会できた妻や子なのに別れてしまうのも、善人としては冷淡すぎるような気がしてなりませんでしたけどねえ。