ひと口かじると涙がほろり
あなたの心を優しく癒すぽかぽか家族小説
さあ、焼くぞ。大切な人のために、そして自分のために。
小田弘毅(オダコウキ)は小学4年生。岩手県に近い青森県の、南部せんべい製造兼店舗兼自宅で両親・姉・祖父母と暮らしています。
見事な職人技で南部せんべいを作る祖父のよっしー77歳。遊び半分、面白半分の見よう見まねで、よっしーのせんべい作りを手伝う弘毅。口は悪いが正直で職人気質のよっしーが好きだし、南部せんべいも好きだけど、クラスメイト達にはできればボロいせんべい店を知られたくない微妙な少年心理。
せんべい店をバカにするクラスメイトもいてケンカになったりするけど、仲良しの友達もいるし、親に叱られたり、よっしーに注意されたり褒められたりしながら、弘毅は毎日を元気に過ごしています。
ある日、不登校気味のクラスメイトの潤(ジュン)が店に来ていて、よっしーと窯でせんべいを焼いていました。なかなか上手な潤、弘毅は負けられない。せんべいで二人の気持ちがつながっていきます。
せんべい店は嫌いだったけど、せんべいを焼く工程には興味を持っていた。
潤は両親が離婚し母親と暮らすため転校していくことになります。仲良くなったのに、離れ離れになり、もう会えないと思うと、怒りや腹立ちを抑えきれず不機嫌になる弘毅。
よっしーの仲良し同級生が病死し、もう二度と会うことはできない現実に向き合います。弘毅は潤と遠く離れても会おうと思えば会える、転校しても会えないわけではないと気づきます。少年が一歩おとなに近づく瞬間でしょうか。
読み終えた後、レイ・ブラッドベリの『たんぽぽのお酒』のニュアンスに似てると思いました。記憶間違いかもしれないけど、なんとなく。
子ども時代の小さな苛立ちやもどかしさが散りばめられていて、やさしい気持ちに包まれホームドラマのような温もりある物語です。
久しぶりに南部せんべいを食べたくなりました。スーパーへ行ったら買ってこようと思います。
