阿茶の知られざる真実に迫る、傑作歴史小説

私はこれから、この世で最も恐ろしい罪を犯す。

 

 

須和(スワ)6歳の父は甲斐の武田家に仕え、今川家の家臣・神尾忠重(カンオタダシゲ)と親しくしていた。朝早く忠重が来て「今川義元公、尾張桶狭間にてお討ち死に」と伝えます。

 

18歳になった須和は忠重からプロポーズされ夫婦となり、20歳で男児を出産しますが、4年後に忠重は病死してしまいます。

 

須和は息子・猪之助を連れ、家康に息子の士官を願い出て、自分は下仕えの侍女にしていただきたいと申し出る。すると、家康は士官を了承し、須和の名を新しく「阿茶」と命名、その日は八十八夜で、家康の浜松が茶処だから「阿茶」か。そして、阿茶は侍女でなく側室に抜擢されシンデレラストーリーが幕開ける。

 

浜松城で家康に仕える阿茶は、先輩側室の西郷局に会い、美しく聡明で気さくなふるまいに感激し意気投合して仲良くなります。

 

小牧山へ行く家康に同行した阿茶は、土砂崩れに巻き込まれ流産してしまいます。その後も懐妊することなく、西郷局の息子・長松(のちの秀忠)の母親代わりとして面倒を見、奥の仕切り役と出世していきます。

 

天下分け目の関ケ原合戦に遅刻するという大失態の秀忠。家康は秀忠のために最高の花道を用意したのにと大激怒。切腹しようかと思い詰める秀忠に、阿茶は家康との仲を取り持ちます。

 

徳川二代目将軍・秀忠は、末娘の和姫を入内させ天皇家の外祖父になる野望を持つ。父・家康にできなかったことをやり遂げたい。和姫は懐妊し女子は生まれるが男子がなかなか生まれない、ようやく男子誕生しても育たず亡くなってしまう。

 

そして、和姫の娘が即位し明正天皇となり、秀忠は望み通り天皇の外祖父となります。この時代は女性天皇ということに反発はなかったんでしょうかね。

 

和姫の子が天皇となるためなら手段を選ばなかった阿茶ですが、天主教(キリスト教)に関心があり、子を流すことの罪深さを知りながら、罪を犯す覚悟だったのです。でも、なぜ阿茶が切支丹的教えに影響されたかが、いまいちピンとこなくて読み進むのに苦戦しました。

 

もし、阿茶が名家の出身で身分が高ければ、正室になっていたかもしれないくらいの優秀さ頭の回転の良さですが、見栄えで負けてたようです。

 

秀吉の側室・淀君がエキセントリックでサイコな女性として書かれ、反対に阿茶は沈着冷静で計算高い風に描写されて面白かったです。淀君の子の父は秀吉ではないというけど、たぶんそうなんだろうけど、じゃ誰よ?となるわけですよね。

 

『家康さまの薬師』の阿茶と読み比べると、こちらの『阿茶』のほうが通説に近いでしょうか。『家康さまの薬師』はどちらかというとフィクション性が強いように思いました。続けて読むと混乱してしまい、阿茶いろいろです。