怖い日常。

芥川賞作家・柴崎友香が「誰かか不在の場所」を見つめつつ、怖いものを詰め込んだ怪談集

 

短く26話あります。

 

〝わたし〟は「恋愛小説家」と呼ばれることが気恥ずかしくなり、「怪談作家」になろうと決めて1年以上過ぎたが、怪談も怪奇小説も書けていない。担当編集者からは、夜眠れなくなるような恐怖を書いてほしいと言われている。しかし、〝わたし〟は幽霊は見えないし、怪談めいたできごとに遭遇したこともなく行き詰まっている。

 

ひと月前に引っ越した新居は「かわうそ堀二丁目」のアパート。ソファに置いたはずの文庫本が探しても見つからない。〝わたし〟は購入した古本屋に行き同じ本を買って来る。が、再びなくなってしまう。また古本屋に行き同じ本を見つけページをめくると、鉛筆でつけておいた印があった!

 

怖いって、ほんとうのところ、なにが怖いんでしょうね

 

人ってほんとうに怖い目にあったとき、その記憶をなかったことにしたり、普通に生活するために考えないようにする。たとえば幽霊を見たとしても、見間違えとか夢だったとか、人間の記憶を都合よく変換していく。霊感とかないほうが、話としての怖さを楽しめるともいえる‥

 

古い店舗の蔵の中にあった「手形が浮き出る古地図」を見せてもらうと〝わたし〟は眠り込んでしまいそうに眠くなる。怪奇現象が近づくと眠気に襲われる!

 


怪談の定番といえば、柳の木の下の幽霊とか井戸の中の化け物などを思い浮かべますが、日常のなかの小さな違和感の怖さが、いくつも書かれています。あ、これ、もしかして、あったかも?

 

あるはずのものがなくて

ないはずのものがあるって‥

 

見過ごしてしまいそうな些細なエピソードでも積み重なると、じわじわ怖さが増幅して、背中がぞわりとする感じがしました。