東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花‥‥

学問の神様として超有名な菅原道真の物語、ややコメディ寄りでくすくす笑えます。

心地よく澄んだ風が、大宰府・朱雀大路を行き交う人々の足元に小さな旋風を巻いている。

昌泰4年(西暦901年)、龍野保積(タツノノホヅミ)43歳は大宰府庁の官僚。都から大宰府に左遷されてきた菅原道真(スガワラノミチザネ)の目付役を、押し付けられながらも居眠りばかりで、部下から「うたたね殿」と陰口される働かない使えないオジサンだった。

小野葛根(オノノクズネ)は小野篁の孫で28歳の新進気鋭の官僚。鋭い眼差し、小柄だけど鍛えられた体躯の美男だが、高慢で融通が利かない。保積の上司的存在。

 

流人同然に大宰府に連れて来られ、慟哭と呪詛ばかりだった菅原道真も、ようやく新しい環境に慣れてきたころ、天皇から届いた改元の詔を、保積が届けると、そこに書かれていた内容は、新しい元号を延喜(エンギ)にすることと

昨今、鯨鯢恩徳に叛きて政を喰らわんと欲し、すでに西海に沈む‥

帝の恩に背いて政権を奪おうとし、西海に葬られた鯨。すなわち道真のことを非難し貶める内容だった。逆上し怒りのあまり文書を破り捨て、大暴れする菅原道真57歳。猫背気味の背と肉の薄い体躯は威厳に乏しく、学者貴族というより、叩き上げの商人を思わせる顔貌だったと表現されていますが、いかがでしょう。

 

大宰府に流された菅原道真は、暇を持て余し、住まう館からこっそり抜け出しては、海外からの船が出入りする博多津へ出かけていた。唐や新羅・高麗からの輸入品を扱う唐物商へ行き、偽名を使い、書画骨董の目利きをして左遷の憂さを晴らしていた。

 

大宰府から内裏に送った唐物に、ニセモノが混じっていたことがわかり、調査のために都から役人がやってくる。だれが、どのようにして、本物と偽物を入れ替えたのか。犯人は本物を見分ける目利きのできる者、何のために?

犯人を追う小野葛根、立ちはだかる菅原道真、うろたえる龍野保積。

顛末はいかに?

 

呪って呪って呪ってまいります、そんなイメージある菅原道真公。

日本三大怨霊のひとりの菅原道真ではなく、優秀で有能な学者、でも性格的にクセあり、左遷された恨みに吼えまくる男。そんな姿に、ちょっぴり親しみ感じました。

 

スピーディーな話の流れ、クラシック日本語文体ではないし、読みやすくて感動的におもしろかったです。