1977年、中学生だった。
勉強の合間につけたテレビから、不思議なメロディが流れてきた。
ブラウン管には、天使を思わせる少年が映っている。
その人は気持ち良さそうに体を揺らしながら、ピアノを弾いていた。
とても軽やかだ。
ピアノに合わせて歌っている。
特徴的な声に、胸が少し痛くなった。
やさしい声だと思った。
その声を言葉では説明できない。
(少し大人になり、ハスキーという言葉を知ることになる。)
司会者はその人を18才の大学生だと紹介した。
そして、その不思議なメロディは彼の自作だと言う。
「この人はいったい何なんだろう?」
それが彼に出会った最初の印象だった。
それから、毎日毎日彼を追いかけた。
学校の帰りには、書店で掲載雑誌を探した。
出ているラジオは全てチェックし、カセットテープに吹き込み何度も聞いた。
時折、夜空を見上げて夢想した。
バレリーナの少女やプラスチックの人形のような女性…
自分と置き換えてみたりもした。
切ないような悲しいような、何とも言えない気持ちになった。