台風20号は、きのう午後9時に徳島県南部に上陸し、
その後、日付が変わる直前に、兵庫県姫路市付近に再上陸しました。

やはり今回も、

台風の中心付近に加えて、進行方向右側の“危険半円”にあたった、紀伊半島で雨の量が多くなりました。

また、台風の東側、遠く離れた静岡でも、竜巻とみられる突風が発生しました。

このあとは日本海を北へ進み、
低気圧に変わりながら、今夜遅く北海道へ向かいます。

また、東シナ海から朝鮮半島に向かう大回りルートを通っていた台風19号は、
ひと休憩が終わり、今度は20号の後を追うように北海道へ向かいます。

北海道はきょう夕方からあすにかけて大雨に警戒です。

また、台風が日本海に進んでいる間も、
湿気たっぷりの南風で雨雲が発生、発達します。
東海〜関東は、ゲリラ的な雷雨にお気をつけください。
今も、東の空に雨柱(あめばしら)が見えています。
そして、日本海側はきょうも猛暑。
きのうは新潟県内で、40℃が続出しましたが、
きょうも、きのうほどではありませんが、暑さが続きます。
また、都内でも、この土日は35℃を超える暑さが戻りそうです。
 
なお、沖縄近海〜台湾付近は、
しばらく熱帯低気圧の影響を受けることになりそうです。



ところで、きのうはこんなコメントをいただき、思わずドキッとしました。

“AIが導入されたら、気象予報士のお仕事はどうなる?”

職業を聞かれて、気象予報士と答えると、
よくこんな質問が返ってきます。
「やっぱり空を見ただけで天気わかるんですか?」

答えはノーです、残念ながら。

10秒後の空模様はわかります。
10分後の空模様もわかります。
1時間後の空模様は確実にはわかりません。
1日後の空模様はだいたいしかわかりません。
1週間後の空模様はもっとわかりません。

でも、聞かれると、たいてい答えられるのは、
毎日、解析している天気図が、すでに頭の中に叩き込まれているからです。

結局、私は毎日空ではなく、
パソコンの解析データとにらめっこしながら、この先の天気を予想しています。
おじいちゃんがため息つきそうだなぁ…

私の祖父は、
ラジオのない時代から貿易船で航海をしていました。

ある時、一緒に遊んでいると、祖父が突然言いました。
「もう帰ろう、あと30分もしたら雨が落ちてくる」
まだ青空なのに…と思いながら、
祖父の家に向かい、玄関の軒下で大粒の雨が降り出したのを見たとき、
おじいちゃんは預言者なのだと思いました。
「空は未来を教えてくれる。よーく見てごらん」

あんな雲が出たら、あの木が音を立てたら、このにおいがしたら、あの家が見えなくなったら…
雨が降るんだ!

いつのまにか、
五感で感じる現実の空ではなく、
パソコンの中の仮想の空を見る時間のほうが、長くなってしまいました。

こんなことをしてたら、
本当にAIにお仕事をとられちゃうぞ!!
気象予報士も、毎日空を見ている漁師の方や農家の方の経験には勝てません。

実際に空を見て、風を感じて、未来の天気を測するのが“観天望気”。
そしてもう1つ、大切なのが、
昔の情報を得て未来に生かす、気象の“温故知新”です。
今回の台風でも、
2004年の16号の高潮の教訓が生かされました。
天気予報には、この2つが欠かせません。

時代は進歩して、
スーパーコンピュータは、目覚ましい進歩を遂げました。
過去の様々な“蓄積”データから見事に仮想の空を計算します。
ただ、それでも、コンピュータが打ち出した仮想の空と、実際の空との違いを“判断”し、
未来予測に修正を加えるのは、人間の仕事です。
そして、人々の生活背景や心情を“感じ取って”、ニュアンスを“伝える”のは、人間の仕事です。

データの蓄積や計算など“温故知新”の部分はパソコンに任せてもいいでしょう。
ただ、前代未聞の気象現象に出くわした時には、やみくもにコンピュータを走らせるのではなく、
実際に空を見上げて“観天望気”をすることに、常に立ち返りたい。
不安を抱く人の心を感じ取ったり、雨が降って喜ぶ人の気持ちを汲み取ったり、
その一人ひとり異なるハートになるべく寄り添って伝えることは、
人間のやるべき仕事だと思っています。

大切なことを思い出させてくれました。
ありがとうございます。
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コメントありがとうございます!
*大阪発の民放情報番組、
“西日本豪雨級”と言っていて、NHKの気象センターはみな驚愕でした。
たしかに近畿は大雨でしたけどもね…
*100年に一度とか、想定外とか、
もう前代未聞のことが起こりすぎていますね。
何があってもおかしくない、と意識を変えていかないといけないかもしれませんね。
*台湾からでしょうか。
動きの遅い熱帯低気圧がウロウロしていますよね。
息子が5月に行った台湾がものすごく楽しかったようで、今もまた行きたいと言っています。
活力があって、食事もおいしくて、素敵なところですよね。