きょう昼過ぎ、岐阜県にも新たに大雨特別警報が出されました。
すでに解除された地域も含め、
きのうからきょう、特別警報が出された地域は、
福岡県、佐賀県、長崎県、広島県、岡山県、鳥取県、兵庫県、京都府、岐阜県
となりました。
一連の雨で、これだけ多くの地域に、
大雨特別警報が出されることは、過去に例がないことです。
もちろん、特別警報の制度が導入される前を遡っても、
これだけ広範囲が大雨に見舞われることは、めったにありません。
犠牲者が刻々と増えていく状況に、心が痛み、無力さを感じます。
去年の九州北部豪雨と、2014年の広島の豪雨がまるでいっぺんに襲ってきたよう…
今回、なぜ、これほどまでの大雨になってしまったのでしょうか。
気象台の方が、会見で“異常な事態”と語っていましたが、
これほどまでの事態に陥るときは、
たくさんの要因が不運にも重なってしまうことが多いです。
今回の場合、大きく4つです。
①梅雨前線が同じ場所に停滞し続けたこと
②台風7号で事前に大雨になっていたこと
③アジアモンスーンと熱帯擾乱で東シナ海に非常に暖かく湿った空気がたまっていたこと
④最後に上空の寒気が流れ込み、低気圧が発生したこと
まず、関東は梅雨明けしたものの、そのほかはまだ梅雨のさなか。
北のオホーツク海高気圧と南の太平洋高気圧の力が拮抗し、
梅雨前線がずっと本州付近に停滞しました。
そして、台風7号が、九州北部に大雨を降らせ、
また日本海に抜けた後も、
雨雲のもととなる湿った空気を呼び込んで、事前の降雨量が多くなりました。
さらに、この湿った空気のレベルが、ハンパない…
折りしも、東シナ海には、熱帯擾乱(実際は寒冷渦に似た構造)が存在し、
東南アジアモンスーン経由の湿った空気と、太平洋高気圧の縁を回る熱帯の湿った空気を集めていました。
気象の世界では、“相当温位”といって暖かく湿った空気のレベルを知ることができますが、
いわゆる梅雨末期の非常に激しい雨を降らせる威力の345K(ケルビン)を上回る、351Kの暖湿気が流れ込みました。
そして、とどめをさすように…
昨夜から、上空に寒気を伴った気圧の谷が接近。
これに伴って、前線上に低気圧が発生し、
この低気圧をめがけて、非常に暖かく湿った空気が集中的に流れ込んだのです。
組織的な雨雲が発生しました。
しかも、低気圧の動きが遅いので、同じところに長く停滞してしまいました。
こちらは、大気の骨格をあらわすレントゲンともいえる、水蒸気画像。
今回の大気の流れがわかります。
特に、この一連の大雨では、
湿った空気が山にぶつかるエリアで雨雲が次々と発生、停滞しました。
東シナ海からダイレクトに湿った風が吹きつけた長崎~福岡、
豊後水道を通り抜けた湿った風が吹きつけた広島~岡山、
紀伊水道を通り抜けた湿った風が吹きつけた兵庫~京都、
土佐湾から湿った風が吹きつけた高知~徳島、
熊野灘から伊勢湾を渡った湿った風が中部山岳に吹きつけた岐阜です。
いずれも山を北に控えた土地。
特に、中国地方は、まさ土といって、水にもろい地盤だったことが、
2014年に続き、今回も被害が拡大してしまった要因だと思います。
2日間で1000ミリクラスの大雨が降ることは、
過去、数えるほどしか例がありませんが、2000年以降増えているのが現実です。
世界的な気温上昇がその一因ともいえますが、
これまでとは違う対策を講じないといけないところまで来ているのかもしれません。
まだ、あすにかけても、
九州など一度雨がやんだ地域も雨が断続的に降ります。
大雨特別警報が解除された地域や、
特別警報が出ていなくても雨量が多くなっている四国などは、
引き続き、厳重な警戒が必要です。
こうした中、南の海上では、台風8号が、
猛烈な勢力にまで発達しています。
来週火曜日~水曜日の沖縄は、大雨・暴風の大荒れの天気となるおそれがあります。
今のうちに対策を進めておいてください。