きみはぼくの天使ー
ある日あなたはつぶやいた
きみはぼくの天使
ぼくも天使になりたいな
そのわけは・・・
だれもが知っている
天使はつばさを広げ
自由に空をかけめぐる
つばさがあれば・・・西
母のもとへ自由に行けると
・・・彼は言ったのです
きみは天使
ぼくも天使になりたいな・・・
そして今
天使になったのはあなたー
天使になりたいな・・・と
つぶやくのは・・・ あたしー
つぶやくのは・・・ あたしー
・・・これは、上原きみこの漫画「天使のセレナーデ」のモノローグ
そうして、西と東に分かれてしまって離れ離れになった恋人たち、家族たちのドラマが始まるんです
最近久々に読んだこの「天使のセレナーデ」
前に読んだ時からだいぶ経つけど、全く色褪せることなく心に残ったので、少し語りたいと思います
舞台は、当時はまだ分かれていた国、ドイツが舞台
お話の中ではライン国となっています
まだ、ベルリンの壁が壊されるずっと前に連載された作品です
話はまだ鉄の壁ができる前、川を境に国は分かれていたものの、小さな子供でさえ行き来できるほど監視は厳しくなかった頃から始まります
主人公ロッティは7歳西側の女の子
ジャーニは、9歳東側の男の子
ロッティが、川のそばの木に風船をひっかけてしまったことから、二人は出会います
一緒に、将来はリーブル音楽学院に行こうと語り合います
リーブルは、国内で、東と西のどちらの人間でも入ることのできるおそらく唯一の場所でした
そして、幼いながらに結婚の約束までします
でもある日、川を埋めたてて鉄の壁が造られはじめ、幼い二人は東と西に離れ離れになってしまいます
最後にジャーニの渡してくれた約束の証である指輪を宝物に、ロッティはリーブルを目指して大きくなります
そして、入ったリーブル音楽学院
そこにはもちろんジャーニ(ジョー)もいました
でも、いろんなすれ違いが重なって、ロッティは、そばにいてくれた、カールに惹かれていってしまったりします
でも、やがて本当に自分が惹かれていたのは幼い頃からの恋人だったジョーで、自分はカールにジョーの面影を求めていたことに気づくんです
そして二人の中で悩み苦しむロッティ
ジョーはジョーで、自分は振られたと思っていたので、カールのために気持ちを表すこともなく、ずっと胸に秘めていました
カールも、可哀想なんだけど
それに、ジョーとロッティ、お互いすれ違いがあり、お互い相手には好きな人がいると思ってしまっていました
それが、ある事件を境に、お互いに愛し合っていることを知るんです
その場面が好き
そんな中火事が起きて・・・
ジョーは、ロッティを助けに来るのです
そして、ロッティのうわ言で、自分のことを好きだと知ります
ジョーに気がついたロッティは、自分を置いて早く逃げてというのですがー
ジョーの言葉、ぼくの命より大事ー
ここがグッときました
助けに来るというシチュエーションも好きです
何より、ドラマチック
・・そうして
二人はお互いに好きだと知ります
そして、抱き合う二人
火の中で・・
抑えてきた二人の愛がほとばしるこの瞬間
物語の本当に後半だけど、やっと二人が結びついて嬉しかった
小さな頃からの愛が、やっとかなったところです
火事の中で抱き合うというのも素敵(経験したくはありませんが
)
そこは、はいからさんみたい^ ^
ところで、ジョーは小さい頃本当の両親から引きはなされて苦労してきた少年でした
だから、本当の両親に会いたくて、何度も鉄の壁を越えようとするんです
危うく捕まりそうになった時、カールたちに助けてもらって難を逃れるけれど、向こう側には行けず、迎えにきた母と鉄格子を挟んでの対面をします
鉄格子があるので、抱きしめ合うこともできないー
辛かったろうな
ジョーは、人一倍我慢しちゃう性格みたいで、いろんな辛いことがあっても、泣くこともじっとこらえてるし、それだから、カールのため、自分の恋心を抑えていたり
そんなジョーが、ロッティのそばだと素直に泣けたりするんです
やっぱりお互いに必要なんですね
弱いところのある、でも一途で、情熱的なジョー
好きなキャラなんです
でも、とうとう三度目の鉄の壁突破で、ジョーは罠にハマり、銃で打たれてしまいます
そして、ロッティの心情が、最初に書いた歌の通りになる感じがするんです
天使になってしまったのは、あなたー
会いたくて、天使になりたいとつぶやくのはわたしーみたいな意味だったのかも
だとしたら、すごく切ない・・
そして、そんな理不尽への怒り、鉄の壁のために引き裂かれることへの言いようのない怒りに、ついにリーブルの生徒たちが動きます
みんなの努力、活動の結果、壁がとうとう崩される日が来ます
そして、壁が崩された時、どんなことがあったかは、ぜひ、読んで知ってほしいです
そのころ、まだベルリンの壁は壊されていなかったのに、こんな風な物語を作ったというのもすごいと思うし、何より、東の者だとか、西の者だとか、そうして線を引いていがみ合うことの愚かさを、教えてくれる作品でした
ちなみに、上原きみこの大抵の作品と同じく、最後はハッピーエンド・・だとだけ、言っちゃおう
この物語の、好きなキャラが実はまだいるんです
それはまた今度書いてみます
では、またね(*^^*)