語学の勉強も音楽も芸術も(たぶんビジネスも)
何を伝えたいかという気持ちやメッセージが
先にあることが大事です。

先日mが仕事で見て来たアボリジェンヌ(アボリジニ、オーストラリア原住民)の
芸術作品の素晴らしさについて、いろいろ話してくれました。

ずっと迫害されてきた民族で、
40年ほど前にやっと市民権を得たばかり。

貧しく、大変な暮らしを強いられて来た民族ですが、
現在は、その芸術作品が認められ、
世界中の国立美術館が何百万円という値段で
買っているのだそう。

特徴は、地面に置いて描かれているので、
上下左右がない絵画だそうです。

その作品を制作しているのは、
100歳近いおばあさんだったりするのですが、
それぞれの芸術家は絵画に自分のサインをしないそう。
家族、村全体、民族全体のエスプリを
描いているので、個人の作品ではないと
考えるからだそうです。
収入も皆で分けたりするのでしょうね。

現在の文明社会のエゴにとらわれている考え方とは、対極。

彼女達は、芸術教育どころか、
義務教育も受けていなかったりするわけですが、
昔ながらの家庭での文化継承を受け継いでいるので、
昔は体にペインティングなどを施していた絵の形などを
現在は、絵画という形で表現しているそう。

内容は、昔から村で語り継がれている昔話や、
彼らにしか解らない方法で
土地のテリトリーなどを描いているそう。
見た感じでは、コンテンポラリー・アートに見えるのですが、
暗号のようなものが描かれているのでしょう。

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夕食の時にこんな話をしていた翌日、
コンセルバトワールのレッスン通訳で教授が
「何を音楽に込めるかということが一番大事。」
というお話をされていて
本当にそうだなあと思いました。

「曲によって、それぞれ誰に何を伝えたいのかを
 決めてからその曲に向かうようにしなさい。
 たとえ、それが初見であっても、
 いい加減に楽譜を読まない事。
 まずは、楽器を持たずに楽譜を読んで、
 テーマを必ず決める事。

 フォルテやピアノには、全てその
 テーマに沿った形容詞を書きなさい。

 今までの人生で経験した感情を思い出して、
 その感情を必ずちゃんと込めること。

 曲の物語を作り上げること。
 誰かにその物語を理解してもらえるように音楽をすること。

 そして、それを表現するために
 テクニックを磨くこと。

 ただ漠然と初見をしてしまうと、
 はじめに吹いたイメージで曲が固定されてしまう可能性があるから、
(音楽表現よりも、テクニック的に難しいかどうかで読んでしまう。)
 ちゃんとどう吹きたいのかのイメージを先に持つ事。

 あなたのメッセージは?
 この曲で表現したいことは、何?

 私たちは、最終的には音で表現するから、
 言葉で伝えきれないものを音にするのだけれど。
 そのベースにあるものは、言葉でもメッセージを決めておきなさい。」

こういうことを考えていると、
自分の心の引き出しをいっぱい持っている
人生経験の豊富な人のほうが
やっぱり、説得力のある芸術や音楽ができるのだろう。
と、思うのですよね。

でも時々、若い生徒さんがこういうアドバイスをされて、
心を込めることに集中して演奏をしはじめると、
レッスン中だというのに、聞いていて
なぜだか涙があふれるほどじーんと
感激してしまう瞬間というのが稀にあるのです。

通訳すべきところで、
「すみません。なんだか、ちょっと感激してしまって。」と、
言葉につまっていたら、教授も珍しく同じところで、
少し涙ぐんでいらっしゃいました。

生徒の成長を感じたり、
生徒の私生活で大変なことがあったことをを知っていたりという
ベースもあるかもしれませんが、

ああ、やっぱり。
ちゃんと伝わることは、伝わるのだな。と、
思った瞬間でした。

やはり、コンクールに勝つ為の音楽とか、
有名になってお金を稼ぐ為の音楽というのは、存在しないのです。

心を込めた音楽や芸術があって、
シンプルにそれを受け取る人がいる。
結果的に、評価がついてくることは大事だけれど。

目的は、心やエネルギーを込める事。
その逆ではない。のですよね。

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パレ・ロワイヤル公園の薔薇が綺麗でした。
paris暮らし

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