不可思議な出来事。

それは突然にやってくるもの。


彼からの一通のメール。


「送別会って、君のだったんだね。」


『そうだよ。』


「君はもう少し人の気持ちを考えた方がいい。俺以外の人にこんなことしないで。」




は??



どういう意味かさっぱり分かりませんでした。


送別会、というのは、火曜日に開かれたものです。

私がバイトをやめるというので、もともと後輩が月曜日にやってくれる予定でした。

火曜日は空いていたので、彼とデートの約束を。

しかし、後輩が火曜にしてくれと言ってきました。

13人ほどの人の予定をまた一から合わせるのも大変だと思ったので、

私は彼に断りの電話をすると、彼はそちらを優先させるようにいったのです。


ところが、このメール。


私が彼との約束(彼からしたらそっちが先約だったかもしれないけど)を破ったことに関しては、

もう以上のことから話がついているはず。

責められる理由が分からないので、聞いてみました。


「なんでも話すと、約束してくれてると思っていた。」




は??


大体、後輩はあなたを誘わないだろうし、あなたは私が誘ってもこないだろうし、

それによって傷つくのが私はいやだったから言わなかったのに。


でも、そんなこというと、また言い訳だのグチグチ言われるので、

ただただ素直に、


『ごめんなさい。』


と何度か謝りました。


すると、


「君のごめんなさいはもう聞き飽きたよ。僕の心には何も感じない。」



ですって。


信じられない。


もう、怒りました。


何かが私の中ではじけました。



散々に言おうか迷ったけれど、やっぱり後になってグチグチ言われるのが嫌なので、

少々控えめに、言い返しました。



『あなたは、自分の悲しみとか全部、自分の中に溶かそうとするんですね。

自分で「何でも話してくれると思っていた。」と言ったくせに、大事な感情は隠すの?

あなたのその絶対的な理論で私は何も反論できないのに、あなたは赦さないんですか?

むしろ、もう赦してるのに、私に考えさせようとして、そんなことを言っているの?』



だって、そうでしょう??


彼が本当に私を好きなら、その溢れんばかりの愛で私を包むべきなのに、彼は私を追い詰めた。

(おそらくは、いろいろなものへの嫉妬だと思うのだけど。ここ2ヶ月会ってないから。)

私は、彼が私に会えなくて寂しいのを知っているから謝ったのに、

(じゃなきゃ、私はそこまで怒られるほどのことをしたと思わないことに対して謝れないよ・・・)

あなたは非難の手を弛めないのね・・・



彼は次の日、謝ってきました。


でも、「俺が我慢してやるよ」みたいな言い方で、ちょっとムカってきました。

今さら、どうでもいいけど。

彼は頑固だしプライド高いから、絶対に折れないだろうし。



彼は、私がこれまでに出会った男の人の中で、一番誠実だと思う。

たぶん、浮気はしないだろうし、私だけを愛してくれると思う。

それに正義感が強くて、協調性がないから、自分は正しいことをやっていると信じてるし、それに見合わない行為については排除しようとする。

確かに、誠実だわ。

でも、優しさの欠片もない。

彼は優しくない。

決して優しいとは思えない。

だから、私は彼とは付き合えないの。







『どんなに困難な状況であっても、決してレディとしての誇りと気品を忘れてはいけませんよ。』





『卑屈になることは、傲慢と同じくらい、恥ずかしいことなのですよ。』





『貴方を、愛しています。』


でも、私は結局最後まで、自分の気持ちを貴方に伝えることが出来なかった。




三度目のバレンタインデー。


今年もチョコレートを探しに行く。

初めて見つけた、七枚のメッセージチョコ。

1枚目はhappieness。

2枚目はwishness。

3枚目はthanks。

他は忘れてしまったけれど、

強烈な印象を受けた7枚目を見た瞬間、私はその場に凍りついた。


love。


たった一言。


とても伝えたくて、ずっと心に秘めてた想い。


私はこのチョコを買うことが出来なかった。




私は、覚悟もないし意気地なしで、気持ちすら奥様に負けてるんだわ。

じゃなきゃ、迷わずにこのチョコを買うことが出来たはずだもの。



そんなこと、気にする人じゃない。

私が送ったものなんて、お歳暮よりも価値のないもの。年賀状よりも形式的なもの。

そう思っているかもしれない。

あの人はそういうことに本当に無頓着だから。

そこが、愛しいのだけれど・・・・・。



もう、やめよう。


もう、本当に、終わりにしなきゃだめだ。


でも、どうやって忘れられる?


どうやってあの人への深い愛を沈めることができるんだろう。




結局、子どもが喜びそうな、動物の形のチョコを贈った。


『ご家族でどうぞ』


毎年恒例となったカードと共に。