自宅の庭先で義父八兵衛が毎年キュウリとミニトマトと豆を植えている


15年ほど前、軽めの心筋梗塞で入院した実母のお見舞いに採れたてのキュウリをただ切ってタッパーに詰めて病室に持っていった私


食欲もなくベッドに寝ていた母に

「食べる?」と出すと途端に目を輝かせて

「食べる!食べる!!!」とボリボリ食べだした。

もちろん事前に看護師さんに食べさせてもいいか?と許可は得ていた

「全然食欲ないみたいだから何か食べられるならいい」と言ってくれた


「美味しい……採れたてなの?」

「うん、数時間前に採って来た」

「だろうねぇ…あー、昔のキュウリだ……」


育ちすぎた感のある大きいキュウリはあっという間に母のお腹に入ってしまった。


まあ…水分補給と思えば良いんだろうか?



その後母の様態は急に快方に向かい、予定より早く退院できた


それ以来母は八兵衛のキュウリを「命のキュウリ」と呼んで毎年夏になると送られてくるのを楽しみにしている


先日今年初めての八兵衛キュウリが採れた


「今年も食べる?まだ5本くらいしか採れなかったけど」

と一ヶ月ぶりくらいに電話した私


「食べるよ!決まってるでしょ!」


「じゃあ、明日の朝採ってすぐに宅急便で送る。あと、本も何冊か送るね」と言うと

「ありがとう!待ってるね」


それから1時間、母は電話で最近の出来事を喋り倒していた


カレーの鍋の火加減をみながら付き合う私


時々びっくりするような話題もあったり、逆に「年取ったなぁ……」と心配になるような話もあったり


(近い内に書けるものはアメンバーに書きます)




ともかくずーっと喋りまくる母に相槌だけを打っていた1時間




次の日に、兄から私のスマホに電話が来た


「どうしたの?なんかあった?」と聞いてみたら


「最近……お母さんが元気がないんだ。もう死ぬとか言い出して…」


「は?昨日、1時間喋り倒されたわよ、私。今頃キュウリかじってるんじゃない?」


「あー、そっか。そんならいいわ…」



どうやら兄には「私はもう駄目だ」みたいなふりをしているらしい母


意外としたたかだ




今日も良い日でありますように