正月元旦に一枚の年賀状が長男と次男に届いた。
ふたりの名前が連名で。
文面は印刷してあるものだけ。直筆はない
そしてそれは差出人の住所も名前も書いていない。
息子たちは首をひねる。
「誰だろ?」「ふたりの共通の知り合いだよね?」
結局わからずじまい。
「なんか年初からうっかりした人だね」と笑った2日後、今度は私宛に名前も住所もわからない人からの年賀状がとどいた。
ただ、それには手書きで文面が。なのでその文面から
「おそらく………あの人かな?」と予想を立てた。
実はその方に私は年賀状を出していなかった。なぜならその方、転勤の多い人で、今どこにいるのかがよく分からなかったから。
その人から年賀状が届いたら、その住所に返信しようと思っていた。
ところが……この通りである。
思えばその人らしいと言えばそう。
のんびりマイベース。どんなに切羽詰まっていても怒ったり焦ったりしているのを見たことがない。
失敗しても落ち込んだりするよりも誠意をもって対応をして結果的により良い着地点を見つける人だった。
正月休みも終わる頃、その彼から年賀状が届いた。
「年始に差出人のわからない年賀状が届いて戸惑われた方がいらっしゃるとおもいます。それは、私です。」
なんと、彼はもう一度すべての方に年賀状を送ったのだ。
彼らしい着地点だな、と、変わらぬその態度に笑顔が溢れた。
さて、それでは寒中見舞いを書きましょうか。と思い、寒中見舞いのはがきを探しに出たら。
ないんですよ。どこにも。寒中見舞い用のはがきが
年賀状のソフトに寒中見舞いのデザインもあったけど、たった一枚のために印刷するのも面倒くさい。
しかしながらコンビニにも百均にもない。
調べてみたら「文房具やさんか本屋」には置いてあるらしいけど、家の周りには文房具やさんも本屋もない。いや、正確に言うとここ数年で無くなった。
本屋で紙の本を買うってなかなかなくなったんでしょうね。町の本屋さんはことごとくなくなっていく。
しかたなく、郵便局まで行くと、いくつか冬の絵葉書や寒中見舞いのハガキがおいてあった。
やっと、出せる。
そして、もう一枚、息子たちに来た差出人の書いていない年賀状の送り主は…………
現在のところ全くだれなのかわからない。