昨日予告した両親の結婚記念日。
電話をして話したことをちょっと小説風にまとめたいと思います。良ければ読んでください。
主人公は東北にすむ84歳の女性です。
ある日曜日の朝、数ヵ月前からの歯茎の痛みで朝が始まる。歯医者に行っても全然改善しない。
「レントゲンとってもなにも異常はないんだけどなぁ」と歯科医はいう。人の事はいえないけど長い付き合いの歯科医も年を取った。治療はハズキルーペを使っていやがる。
アラ還の長男は
「さっさと歯医者変えろよ。昔は名医だったかもしんないけど今じゃただのやぶ医者だよ。」と偉そうにいう。
ホントにこいつ、偉そうだ。60近くになっていまだに小銭をもらいにくるようなデブのハゲの癖に!
ハネムーンベイビーだった長男。月足らずの未熟児で生まれてきた。妊娠中毒症といわれ、大きな病院で生まれた。市内で一番大きな病院だったから、当時は珍しい保育器があり、何とか生き延びた。
月足らずで生んでしまった負い目から、多少勉強のできが悪くても多めに見て守ってきた。中高一貫の私立校に入れてつきっきりで勉強も見た。
年の離れた妹や弟も生まれたが、そっちは放ったらかしにして育てた。
そんな風に大事に育てた長男はいつの間にか「偉そうなデブ」になった。あんなに可愛かったのに。
認知症の夫は相変わらずワガママ一杯だ。
「おい!」と呼んでは無言でやってほしいことを「察しろ」って具合に命令してくる。
「なにしてほしいかハッキリ言いなさいよ」とわたしもイライラしながらいう。
本当に嫌になる。それもこれも歯茎が痛いせいだと思う。身体の不調は心を蝕む。
歯が痛くて食事もままならない。50キロあった体重は46キロになった。
運動もしないで痩せたからただただ痩せ衰えているのが自分でわかる。嫌になる。
昨日、自分の食欲はないが、夫のためにイタリアンのテイクアウトをした。夫は「不味い!」と一口で食べるのをやめた。去年は同じ店の同じ料理を「これは旨いな!」と食べたくせに。
今日やってきた長男が
「俺が食べてやるよ」と偉そうに食べ出した。
なんでそこまで偉そうなんだ!腹のたつ!
電話がなった。離れて暮らす娘だった。
「結婚記念日おめでとう!あと一年でダイヤモンド婚式ね。」と明るい声で笑う。
あー、そうだったか?とやっと思い出した。
娘はケラケラ笑っている。数週間前はご近所トラブルで落ち込んでいたけど大分元気になったな。良かった。
娘が地方公務員と結婚すると言い出したときには反対した。可もなく不可もないような婿について「どこがいいの?」なんて酷いことも言った。
娘は
「男を見る目のないお母さんに言われてもねー」なんて捨て台詞をはいていたけど、二人の子供にも恵まれて幸せそうだ。婿も今では実の息子たちより頼りになるし、出来た人間だと思っている。
「ねえ、お母さんってさ『東北のおちょやん』みたいね」と娘がいう。
朝ドラか。浮気三昧の夫に悩まされたことは子供たちみんな知っている。特に娘には女同士の会話で話していた。
「まったくだよ!男ってホントに嫌になるよ!どいつもこいつも!」と言ったら娘は大笑いしていた。
「よくもったよね、59年も。」という娘。
「もうさ、なぜあの時別の道を選ばなかったのか、いまだに後悔しきりだよ。何度も何度も別れる選択肢はあったのにさ。今となってはお金もない認知症の身障者を引き取ってくれる人もいないしさ。せめてお金があれば財産目当ての後妻業の女でもいたろうに!」
娘に煽られるように不満をぶちまけた。
娘は母親の暴言にも一切動じずなんなら「もっと言え」とばかりに話を聞き出している。
日頃の鬱憤をはらすかのようにわたしの暴走した口は止まらない。
長くなったので次回に続きます。
母の暴走は止まらないのでお聞き苦しいと思います。
不快な方は読み飛ばしてください。