そもそも、なぜ、数週間前まで見えるところに無造作に置いていた長男のアパートの鍵が急になくなるのか。
それが夫の癖なのだ。
「失くさないように『しまっておかなくちゃ』」という考えがエスカレートするのだ。
今までにもクレジットカード、診察券、車の税金を支払った領収書、などさまざまなものが行方不明になり、後日ビックリするような場所で発見される。
セキュリティのパスワードなども凝りに凝りまくって、あげく書いた紙をどこかに大切にしまい、なくなってパスワードの変更を余儀なくされる、なんて日常茶飯事だ。冬に備えてドングリを隠して、隠し場所を忘れるシマリスみたいだ。
ガサゴソ鍵を真夜中に探す夫。
一緒に探そうとしたら
「分からなくなるから手を出さないで」ときつい口調。
いや、分からなくなったのは誰のせいだよ。
手を出さず見ていると
「見られてるとイライラする」
「ちゃんと探すから!」
などと逆ギレ状態。
ムッとしたけど喧嘩したって文句言ったって探し物は出てこない。
「明日にして今日はもう休んだら?」
と言うと、
「休んでもいいんだ?じゃあ、寝る」と嫌味っぽくいう。
でもね、ここで言い返しても気分がよくなるわけないよね。
いや本当は言いたいよね。
「はあ?元はと言えば誰のせい?何の逆ギレだよ。見つからなかったら違約金、あなたのお小遣いから引いてやるからね!」くらいのこと。
しかし、もっと効率的に逆ギレを反省させるために私は敢えて黙って寝た。
次の日、起きて、昨日のことなど忘れたように夫にベッドの中で話しかける。
「おはよ。」
夫も私が普通なので挨拶を返す。
「はい、ギューして。」とハグを要求。大人しく従う夫。ハグされながら小さな声でいう。
「昨日、夫君、怒ってて怖かった」
夫、あせる。
「え?怒ってないよ。」
「でも怖かったもん。」
「ごめんね。怒ってないよ。でもきつい言い方だったかも。」
「うん。もうあんな風に言わないでね。」
どう?どう?この熟練のあざといテクニック。
アラフィフ、やるときはやるよ。
で、鍵。出てきました。
プラスチックのバッグに入れて、ショルダーバッグのポケットにしまったものを普段使わない大きなバッグの中に入れるという、まさかの三重バッグ保管。
よくさ、テレビ番組で開かずの金庫を開けるっていうのあるじゃないですか。あれって大概中身、空だったり、価値のないものがでてくるのがパターンですよね?
その番組見ると夫
「こういうのってさ、鍵とか大事にしすぎて却ってワケわかんなくなるんだろうね。金庫の意味ないよね」なんていう。
うん、その言葉、そっくりそのままお返しします。
数年に一度訪れる我が家の「宝さがし」。
無事でてきました。
今回は。ですけどね。