ヴェネツィアの夕暮れ | 平穏な日々と菫色

平穏な日々と菫色

ゆっくりとした毎日 時々アンニュイな感情

いま住んでいる地元は曇り。
予報で午後には雨マークも出ていたから
降り出してくるのかもしれない。今はまだ、明るさの残る曇り。
ヴェネツィアを訪れた日も、明るさの残る曇りの夕暮れ時だった。

主人の仕事は夏休みは比較的余裕のある日数の休暇が取れるが
私は暑いのが苦手、主人は ”夏フェス" に行くのが大事な行事。
有給休暇もあるが、長く取るのは難しい。年末年始は3連休プラス
1日といった感じで、あっという間に過ぎてしまう。行きたかった
イタリアへ何とか行けますようにという気持ちを、心の片隅にいつも
入れていたら、翌夏の新聞にピッタリと日数が合わせられるツアーが
載っていた。これだ!と思った私は逃さぬようすぐに旅行会社に電話
を入れたのを覚えている。

有給休暇と祝日を合わせ3泊5日の11月のツアー。
行くのはヴェネツィア・フィレンツェ・ローマの3都市。願いが叶った
2人はスーツケースを新調した。主人にとっては初めての海外、
実質新婚旅行である。

途中ドバイ経由のエミレーツで行き、行程の初日がヴェネツィア
だった。日が暮れなずんでいる中、最初に見学したのが修復中の
「ため息橋」。
結構規模の大きな修復を行っていたように思う。

次にヴァポレットと呼ばれる水上バスに乗り、しばし遊覧。
海上から見た「サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂」は夕陽で
白亜に輝いてベネツィアの繁栄と没落、光と翳りの光のように
想像以上に美しかった。

港場に着き、ゴンドラに乗る頃にはもう日が落ちようとしていた。
その為これから乗るのは私達がいたツアーのみで、昼間は船頭さんの
歌声が賑やかに響く水路もひっそりとしていた。

水路を進んでいく。ゴンドラは器用に橋をくぐり、時折水路の傍に
誰かが歩いていれば船頭さんが彼らに声をかける。その短いやり取り
以外に聞こえるのは「チャポン」という水の音だけ。
ツアーの皆も段々無口になって行き、古い町並みと細い道を黙って
見ていると、ここがどこなのか、今がいつの時代なのか微かに
分からなくなってくる。自分が現代ではない異国の街にいるかの
ような錯覚は、ゴンドラの終着とともに目が覚めた。

日本語の達者なガラス工房を訪れ、サン・マルコ広場で自由時間。
その後、食事へと向かいその日は終了。次の日はフィレンツェだ。

ヴェネツィアが夕暮れ時だったのは、却って良かったと思う。
いつか、有名なカーニバルの頃に滞在してみたい。