前夫の一年半の嘘。
夫とはお見合い系のアプリで出会った。
その当時の私は、相当なクズ男と別れたばかりだった。そのクズ男は、時々ソワソワしたように出かけて挙動不審だったので、少し泳がせたら、まんまと女を家に入れ、よろしくやっていた。
そんなクズ男とは、その日に別れ、嘘をつかない理性のある人がいいなと、次の彼氏に求めるハードルは低くなっていた。
アプリで出会った夫は、ちょっと頭が弱い感じはしたが、面白いし優しかった。
交際中は問題がないように思えた。
ところが結婚してからは、粗が次々に出てくるようになった。
まず、女の影がみえた。
毎日のように、同じ会社の事務員に、おはよう、おやすみ、今日は会えるかなーなどと気持ちの悪いメールをしている形跡を見つけてしまった。
結婚してまもなくだったから、『なんでも無い関係ならやめて』と真剣に話をしてケリはついた。
結婚して、一年が過ぎた頃、見覚えのない自動車税の通知がきた。
その額から軽自動車でもないことはすぐわかったし、夫に何の自動車税なのか問いただした。
初めは何の言い訳なのか、わけのわからない言い訳の話をしていたが、段々辻褄が合わない話になり、私のロジカルな尋問に耐えられず、夫はポツリポツリと本当のことを話し始めた。
どうやら、私とアプリで出会った時に、女がいて、別れ話をしたらしいが断られ、本人がいうには慰謝料的な意味で新車をローンで購入して渡したらしい。
そのローンは私たちの家計費から支払われ、名義が夫のままだから、自動車税も夫にくる訳だが、その車の所在もわからないと言う呆れた話だった。
結局、弁護士を雇い、その女と今後のローンの支払いを解約し、車を売却することで和解した。
弁護士費用も家計費から出費したし、私は夫の顔を見るのも嫌になっていた。
夫はそのうち、家に帰って来なくなった。
会社には寮があり、そこを住処にするようになっていた。
月に一度くらい、たまに帰ってきて、酒を飲んでは暴れて、どうしようもなかった。
世間体もあるし、家も購入していたしで、決断を踏切れないでいたが、限界だった。
悲しくて淋しくて、出会い系のアプリをダウンロードしていた。
どうしようもない心の隙間を埋められるような気がしていた。
アプリは中毒だった。こんな私でも、幸せが欲しくなっていた。そんな幻想も、新しい人生の兆しに見えてしまった。
結局、夫とは6年で離婚した。
ガストに呼び出し、離婚したいと話を切り出して、1時間くらいで話は終わった。
その後の引越しや手続きのことはあまり覚えていない。
もう思い出すこともないと思っていたけど、なんだか思い出してしまったな。