会社に私と同じ、パート社員がいる。


その彼女から

退職するんですと打ち明けられた。


彼女の真意は知らないが、

私のことは入社時から気にかけてくれていた。


私が入社した日に

歓迎会を開いてくれて、


何となく会話した流れで、

彼女は中途入社で一年ほどだと聞いた。


年齢は知らないが、

小さな修学児がいる様子で、

朝と夕方は時短勤務している。


穏やかそうな人柄で癖もなくおとなしい印象で

普段は特に話すこともないが、

上司を悪く言わないけど、

他の社員に同調したりして、

優しいんだろうなとは感じていた。


その彼女から

今日、声をかけられた。


実は、退職するんです。と

彼女は言った。


少し驚いたフリをした。

何故なら何となくそんな気がしたからだ。


社会経験が長いと

そういう告白場面に何度か遭遇する。


社交辞令なのか本音なのか

わからないリアクションをとるし、

そうされるし、

嘘くさいリアクションを見抜けるようにもなるし、

寂しいが、まあ、ある。


彼女の告白に

迷いなく少し大袈裟なリアクションをとったあと、

何故退職するのかと質問した。

まあ、こんな空気の時は

聞いて欲しいからに決まっている。


わざわざ、私が席をたち、

少し離れたところを捕まえて、

いきなり退職をすると告白されたら、

理由を聞かないほうが

シラける。


彼女は、

一瞬迷ったような空気感は出したものの、

身のうちを話し始めた。


ところが、

話の序盤で、

今の時代、そんなところまで聞いてはいけないような内容になりそうなので、

一度話を遮って、

深掘りするような質問をして

ごめんなさいと謝った。


彼女は、その私の謝罪の言葉に重ねるように、

いいんです、大丈夫ですと

明るい顔で話を続けた。


今は子供と二人暮らしで

入社時はパートで十分だったけれど、

家の近くで正社員の仕事を探している、

朝夕方の子供の通学も見たいし、

退職も引き留められたけど、

いろいろ考えた結果と言った。


一気に私は

同情してしまった。


私も娘が小学2年生の時に離婚した。


もうだいぶ前のことだけど、

我ながらよく乗り越えたなと思う。


だが、

そんな私のどーしょーもないエピソードなんて

披露しても仕方ない。


せっかくの環境があるんだし、

会社に残ることも考えながら、次の転職がうまくいくことを応援するような話と、

彼女の退職を残念に思う気持ちを伝えた。


特に彼女への思い入れもないし、

彼女がいないとどうなるでもないし、

それは彼女も感じているだろう。


でも、彼女には

そんな社交辞令が

気持ちをスッキリさせるものであることが

大人の事情というものだ。


この社会は不合理だ。

女性は母性があると子どもの世話をするのが当たり前と言われ、

一方で、シングルマザーの手当はひどいものだ。


また、女性は

パート職員で採用されたりして、

給与が低いことが暗黙の了解だったりすることもある。


なんかモヤモヤするな。