「時代は変わる。取り締まりが厳しくなって総会屋の仕事なくなる。M子と息子を頼むわ」

離婚成立する時、古谷は父にそう言った。


リフォームを終えてさらに2年の歳月が過ぎていた。

M子は夜の町に戻っていた。
元のお店をユキに譲り、別のお店を開店。
前ほど繁盛はしなかったが、こじんまり落ち着いたお店をもった。
そこに父は度々飲みに訪れた。
2人は愛し合っていた。

古谷は相変わらず好き勝手飛び回っていた。
ユキとは終わっていて、新たな女がいた。
M子は古谷の女が哀れにすら感じた。
(そいつは女たらしや、すぐ捨てられるわ。遊びや。わからんの?私は違う。あんたらとは違うんや)


この頃になると疎遠になっていた母、姉や妹達と会うようになっていた。
家族が全員大阪にでてきてもう鹿児島には帰る家はなくなっていた。

姉は南でお店を大きくしていった。
妹のT子は昼間は美容室で働き、夜は相変わらずヘルプに入っていた。

姉は一等地に母と妹たちのためにマンションを購入し、自分の家族が住む一軒家を市内に建てた。

姉にM子は偉そうな態度をとることはなくなった。

姉妹は古谷との離婚は賛成だったけど不倫の末の略奪婚を祝福することはできなかった。

父は裕福な家の育ちだった。代々手広く事業を起こしていて、父はインテリアに興味を持ち若くして会社を持たせてもらっていた。
お見合いで知り合った女性と結婚、女の子誕生、仕事も軌道にのり、人生順調そのものだった。

「別れてほしい」

好きな人ができたから…
向こうにも家庭がある。

父の父は怒り狂い勘当。
「○○○家の敷地は今後一切またがさん。何がおきても援助しない」

大金の慰謝料を支払い、全てを捨ててM子の元へやってきた。
昭和55年も幕閉じ、自ら茨らの道を歩み出した。

M子の息子は小さい頃から知っている父を本当の父親のように思い懐いていた。
また父も愛情を注いでいた。

「人の幸せ壊して幸せになった者はおらん。いつか天罰が下るわ」

M子の母が小さい声でつぶやいた。


みんな誰かの幸せの上に立ってる。

自分が嬉しいことの影に悲しい人がいる。

世界中でこの時も笑顔の人がいれば泣いてる人がいる。

それではあかんの?…

「好きになった人がたまたま互いに別の人と家族もってた!それだけのことやんか!」

M子は誰にも祝福されないことに頭に血がのぼってヒステリックに叫んだ。

でもね…天罰は下るんだ。
私という天罰。

続く