幸せのありか | 町の本屋さん

幸せのありか

それから私達はしばらく無言のまま景色を眺めていた。
言葉が邪魔くさい。
自然の中では言葉なんか無くてもいいのかもしれない。
昔むかしの狩りをして自然と共に生きてた時代には言葉なんて存在しなかったではないか。
なんて一人で思った。
このまま自然に溶け込んでしまいたい。
あの眺めの向こうで暮らしたい。
心も体も穏やかに。
でも自然は私を異物として吐き出すだろう。
所詮私は人間。
あの中では生きていけないんだ。
でも本当に吸い込まれそう。
そう思ったら哲生が言った。
「ここにのまれちゃいけないよ。俺達帰らないといけないんだから。」
私は驚いた。
心が読まれてるようで薄気味悪かった。
「うん。」
と私はうなずいた。
哲生は勘が鋭い。
何を考えているのかバレてる。
ひょっとして本当に心の中が読めるのかな。
と馬鹿なことを本気で考えちゃうくらい、いつもドキッとさせられるんだ。
拓実のこともきっとバレてる。
勘のいい哲生のことだから。