幸せのありか | 町の本屋さん

幸せのありか

哲生は本当に家事が好きなんだと思う。
朝食の後片付けをして洗濯機をまわして掃除機をかける。
手際よく家事をこなす。
女がいるのに…。
「掃除好きなんだね。」と私は言った。
「そうだね。きれい好きなほうだと思う。」
と哲生は得意気に言った。
「何でも完璧なんだ。」
と私が言うと哲生は驚いた。
「俺が完璧?」
「そう。何でもさらっとこなしてそう。」
「俺はそんな器用じゃないよ。」
「そうかな。」
「さらっとこなす影にはとてつもない努力があるんだよ。」
と哲生は言った。
私は仕事でも哲生の要領の良さには感心していた。
できる男。
そんなイメージ。
できる男の影の努力なんて誰も知らない。
「完璧な人間に俺もなりたいよ。」
哲生は小さな声で言った。
そう言った哲生の顔はとても淋しげだった。