怪仏異神なのか、異怪神仏なのか。
江戸ミステリーツアーの相棒 本田不二雄氏がこれまた面白い本を出した。
ページを開くと脳内には爆音でエミネムが流れる。もはや化け物や妖怪との境目が分からない妙な神仏がずらりと並んでいる。
本書を読み進めながら感じたのは、私たちが信じる魂や念とは人間の5感でいうと「痛み」なのかもしれないということだ。
「痛み」とは、「生きる」ということそのものだとも言える。
実際に痛み感覚の少ない人は無茶な行動をとって早死にしてしまう。つまり、"魂"に執着がないんです。
ともあれ何かしら誰かしら"魂"を救って欲しいと願ったことは一度はあるはず。
そんな私たちの思いが詰まったものに、縛られ地蔵(p22)がある。お地蔵さんをぐるぐるに縄で縛りながら思いを向ける人とはなんだろうとさえ思う。縛られた地蔵を見ているとなんとも窮屈で痛いだろうにと同情が湧き立つ。
日頃人々の痛みや不安に触れることを生業としている私的に、本書で最も目を引いたのは「牛頭、馬面、人身、鳥手足を、もつ面妖な神(p50)」だ。神の世界には「混ぜるな危険」はないのか? いくらなんでも混ぜ過ぎだろうと思わず声を出してつっこんだ。このようなバケモノ神が生まれるほどこの頃の世は不安に満ち溢れていたのだろうか。
ついでに、道祖神の色々は本当に面白い。
本田氏の投稿にも度々上がる「藁のモンスター」の道祖神を改めてじっくり眺めながらなぜこんな造形になったのかと考え抜いた結果、男性性の感情を表現したもでは?と感じたのだけれど、そう考えると絶妙なキモさがあるwww
世の中の不安が大きければ大きいほど信仰は厚くなる。また、人々の不安が大きいほどよりキバツなデザインのアッと言わせる仏像が誕生するのかもしれない。または、世の中の気を引く為の彫刻家のイタズラ心もあるかもしれない。
この一冊はページをめくるたびに全身こちょこちょされたような気持ちになる。時代を超えた人間たちの信仰のグラデーションを一挙にまとめた本田不二雄による大いなるイタズラだ。
おでかけの際にはバックに潜ませて、近場に変な仏像がないかとめくって立ち寄るのも面白いでしょう。
全国の超奇妙な神仏体験ぜひオススメです!☟
⚫︎本田不二雄著怪仏異神ミステリー
そして、奇しくも同タイミングでの出版ということで、「更年期に神仏ツアー」なるイベントも本田不二雄氏と企画中です!
乞うご期待!