前回のエントリーから少しドタバタあり

(オーケー!!と言った後に、

微妙なディストーションやノイズを見つけ、

あの後、特に一曲、

3度ほどミックスをやり直していた)、

今、ようやく全曲のミックスが完成し、

マスタリングエンジニアに音を送るところです。

 

なぜノイズを見つけるのか、というのは

なかなか深い問題で、

私が音を作っている時は、

本当にニュートラルなセッティングで

やっているのですね。素の状態で。

もちろん、各楽器にリヴァーブや

エフェクトをかけたり、パンニング

(左右に振る)はしますが、

全体の音にリミターをかけながら

音をホット(市場に出しても

負けないように音を大きくきらびやかにする)

作業はしていないわけです。

 

私が基本のミックスを作って

エンジニアのブライアンに渡すのですが、

彼はそのミキシングに手を加え、私に聞かせる時に、

リミターをかけて音をホットにしてきます。

市場に出せる音で返してきます。

 

リミターで音をホットにすると、

例えばですが、

歌っている時に唇から出たノイズや、

ギターの弦をスライドする音とかが、

破裂するように大きく

聞こえてくることがあります。

素の状況では目立たなかったものが、

いきなり前面に押し出されてきます。

 

そうすると、そのノイズたちが、

実際の音楽音に混じって、

アクシデント(あってはならないことが起こった)

ように聞こえる事があります。

 

私は耳が良いので(自慢ではなく本当の事)、

エンジニアが聞こえない音が聞こえたりします。

言い方を変えると、

彼らが気にならない音が気になります。

耳の感度ももちろんですが、それは私が、

その音楽を生み出し組み立てた張本人だから

かもしれません。

 

その音楽たちと、ここ数週間、数ヶ月、

ともに過ごしてきました。

 

自分の体のどこにホクロがあるか、

私は多分、ほとんど把握していないけど、

音楽に関しては、すごく敏感です。

 

だから、チームで音楽を作るって難しい。

自分でじっくり組み立ててきたものを、

いきなり、”どうぞ”と

見知らぬ人(まあ、ブライアンとは長い付き合いですが、

その新しい楽曲のことは知らないわけだから)

に手渡すわけです。

愛情を持って扱ってくれるか、

仕事の一つとして片付けられるか、

それは、私の手腕にかかっています。

 

なので、ウザいだの、

しつこいと嫌がられても、

私は自分の音楽を守るわけです。

 

だって、すごく一生懸命作ってきたものを、

どうでもいいから、何とかしてね!

と渡すわけがないじゃありませんか。

 

さっきも言ったように、

ブライアンとの付き合いは、

2001年のRight Nowからですから、

もう17年になります。

 

心ない無神経な事を言われて

(私にとってはね)、

一緒に仕事をしなくなった時期もありました。

 

でも、音、として考えると、

やはりブライアンは、

私の信頼できるエンジニアです。

なので、ここ数作、

再びまた一緒に仕事をしています。

 

マスタリング エンジニアは、

それよりももっともっと知らない人です。

 

その人が、音楽作りの

最後の鍵を握っています。

 

なので、なので!!!!!

前回Chaos and Stillnessで

もう一人のブライアン、

ブライアン ルーシーとマスタリングした時は、

今まで一生懸命作ってきた、

憂のある音楽から、

身も汁も吸い取ってしまったかのような

干からびた冷たいマスタリングをされて、

私は

”これは無理だ。この人には愛情がない”

と愕然とし、

”無理です。あなたとは仕事できません。

お金が欲しいなら払いますが、

身を引かせてください”と

頼んだのです。

 

この人、ディペッシュ モードや、

オアシスのリアム、マリリンマンソンなんかと

仕事している人ですが、

私には合わない、とそう思いました。

 

そしたら、彼、諦めないのです。

一日中、執拗にメールをしてきて、

途中で放り投げるのか!などと言われて。

 

(そんなはずないじゃありませんか!

私は必死で、別のマスタリングエンジニアを

探してはじめていたのです!!)

 

私がこの世界でどれだけの音楽を

どれだけ沢山の優秀な人々と

作って来たかなんて知らないんですもの。

経歴は少し書いたけど、

彼にはどうでもいい事だから興味なし。

どこかの知らない小娘だと思われていた。

(多分今もね。どこのレーベルとも

サインしていないしね。)

 

で、最後の最後、

断り続けた一日の終わりに、

これでどうだ、と

彼はマスタリングをやり直してきたのです。

 

その出来は、

驚くべき事に、納得のいくものでした。

 

それで和解したのです。

 

あの時、この事を書きたかったのですが、

トラウマチックな出来事だったため、

そして、大変疲れていたため、

文章に出来ませんでした。

 

さて、今回も、その

ブライアン ルーシーとマスタリングします。

一度ああいう思いをしたのだから、

今回は分かっているよね?という

観念の元、再度一緒にやるのですが、

彼は私の心を再び壊すでしょうか。

それとも、私が笑顔になるマスタリングを

して来てくれるでしょうか。

 

前回の事を思い出しておいてください、

と言う事と、勝手にフェードアウトを

つけないでくれ、ということ。

それぞれの曲間の秒数。

全て細かく書いてメールしました。

 

確かに、命を少しずつ削りながら

音楽作りというのは、

運んでいくのです。

 

真理