
著者: 重松 清
タイトル:
最後の言葉
本書には、「戦場に遺された二十四万字の届かなかった手紙」という副題がついている。
その副題のとおり、遠く南洋の地で散っていった日本兵が家族に対して残した手紙や日記にまつわるドキュメンタリーである。
重松は、その手紙や日記を、残された遺族の元へ届けるという役をつとめる。企画そのものはNHKのプロデューサーから持ち込まれたものである。しばらくの葛藤の後、重松はこの仕事を引き受ける。
重松の答えは「大きな言葉」「小さな言葉」。
書き手として「言葉」をどのように伝えるか。
大本営発表、敗退を転進と言い換える操作、天皇陛下万歳・・・等々の「大きな言葉」に我が身をゆだね、祖国の将来の礎となった方々がつづった「小さな言葉」。
本書は、手紙や日記の内容よりも、それを受け取った残された家族の反応に焦点をあてている。
「名誉の戦死」を知らされてから止まってしまっていた時間が、手紙や日記を受け取った瞬間、60年近くの時を経て動き始める。
心の奥底を揺さぶる言葉。
それは、魂のほとばしりであり、親とは、子とは、家族とは、恋人とは、友人とは、そして自分とは、あらためて考えさせる力を持っている。
・・・重い。確かに、重い。
だが、戦争を知らない我々は、今、その知らない戦争を、知らないなりに考えてゆく必要があるのではないだろうか。