世の中の流れは色々な意味で変わった、と確かに思えるこの頃だ。日本社会での、ホスピスについての種まきの時期は長く続いたが、多くの先輩や仲間たちの努力のお陰で、今や全国で“いのち”を支える活動が大きく花開いている。
20年前に、英国でのホスピスムーブメントに触れた私は、あることに気付かされた。
それは、「もはや病気を治せないと分かり、死を遠くない未来に控えた人たちに対して、医療は何が出来るのか。
死を内在した生は、その人の住む社会の文化と深く関わっている。生と死の主人公が、いのちを医療から自分のものとして取り戻し、自立したひとりの人間として人生を生ききることを支えるのが、ホスピスケアである。
それは全く新しい医療の一分野であり、異なる文化を持った日本で、根付くのには時間がかかるだろう。しかし、生病者死は世界共通だ。きっと必要な時が来るはずだ。」
Future is now!(未来は今)
頑固に、ひたすらホスピス運動を、細々と続けてきた私は感慨無量である。ホスピスの理念は、緩和ケアとして、医療の分野に育ちつつある。がんによって引き起こされる苦しい症状を、緩和する技術は専門家によって広く一般医療者に伝えられるだろう。
人生の最期を何処で過ごしたいか、と問われれば、愛する人の居る“家”でと望む人は多い。それを可能にするために、国の制度も少しずつ充実してきている。
在宅ホスピスは、患者さんと家族が深く、改めて“いのち”に向かい合う場、「ありがとう」と「さようなら」がひとつになる瞬間がそこにある。
願わくば、産声を上げるときも、そして息を引き取るときも、いのちへの賛歌を静かに唱えながら支えることが出来る社会を目指して、地球の未来の子供たちに “希望”という種を渡していきたい。
●プロフィール
昭和31年生まれ。山梨県市川三郷町(旧六郷町)出身。福島県立医大卒業後、東京女子医大内科等に勤務。昭和61年から英国のホスピスで研修を受ける。平成7年にふじ内科クリニック開業。
NPO 日本ホスピス・在宅ケア研究会理事。平成14年10月、本年7月にNHK教育テレビのETV2002、ETV2003で医療活動が放送される。
著書に『笑顔で「さよなら」を 在宅ホスピス医の日記から』(KKベストセラーズ)、『あなたと話がしたくって』(オフィスエム)、『いのちに寄り添って』(オフィスエム)、『あなたがいてくれる』『「いのち」の話がしたい』(佼成出版)など多数。
●私が影響を受けた人~尊敬する人~
-シシリー・ソンダース
現代ホスピスの母、セントクリストファーホスピスの創始者。
-エリザベス・キュブラーロス
精神科医「死ぬ瞬間」という本により全世界にしにゆく人の心理状態(受容に至るプロセス)を伝えた。サナトロジー(死生学)の創始者
-レーチェル・カーソン
「沈黙の春」により環境への警告を勇気をもって始めた人
-武田文和
日本でのWHO方式による疼痛緩和を啓蒙し、がん患者のQ.O.Lの向上に貢献した医師
-遠藤周作(作家)
20代の私がまだお元気だった頃の周作先生とお会いできて色々なことを教えていただけたのは何と幸せなことか、と思う。
-マザー・テレサ
愛の力を世界中に教えてくださった方。目の前の人、特に家族を大切にすることを教えてくださり、私たちの大河の一滴の仕事に意味を与えてくださった。