メールアートとは(直訳すると郵便芸術)、展覧会場で自作を発表するのではなく、郵便という手段を通 してアートを見て欲しい相手に送りつける行為のことである。実際に「メールアート」という名をつけたのはフルクサス創設会員のレイ・ジョンソンで1962年の「メールアート宣言」をもって発表された。しかし美術出版社の『現代芸術事典』によると、1955年に嶋本昭三が具体の機関誌『GUTAI』を手刷りで印刷して世界に送付し、世界のアート界と交流するきっかけになった行為がメールアートのはじまりとされている。 メールアートそのものの本来の意味は、コンセプチュアルな試みではなく、ヒエラルキーに対抗するものとして生まれた。芸術におけるヒエラルキー(階層)とは関係なくアートをうみだし、それを発表したいと願うアーティスト達の中から自然発生的に、郵便という方法を用いて世界の美術関係者に送りつけるという行為が生まれた、これが恒常化するうちにネットワークが生まれ、そこにネットワークを通 じてのメールアートという行為が生まれた。 芸術は本来楽しむためのものであり、「人間の頭にはルールというものを勝手に作り上げてしまうことがある。 絵の世界でもそうだ。日本人は日本人の価値観・倫理観にそって、自然にルールをつくってしまっている。世界とメールアートの交信をしてみると、日本人がいかにルールの中でいきているのかが実感できる。」と嶋本氏はいう。「人生の充実やアートの使命について考える中で、自然発生的にうまれてきたのがメールアートのネットワーク」であり、「アートのネットワークの中で、アートを表現し、アートについての意見を交換し、人と人が出会うのである。」嶋本氏は行き詰まる現代美術の中でネットワーキングの持つ多くの可能性を唱えている。