ドン・エリスの音楽をジャンル分けするとすれば、ロック風ビッグバンド・ジャズだろう。
ドン・エリスは、もともとはジャズ・トランペッターだったが、66年頃に自身のオーケストラを結成し、以降78年に夭折するまでコンダクター・コンポーザーとして活動した。アクション映画の音楽を担当したり、ロックの殿堂フィルモアに出演したりと、けっこう先鋭的に活動していたが、それゆえに生前は高い評価を得ることはついぞ無く、死後もかれの音楽が省みられることはめったに無かった。
そんなドン・エリスの作品群がようやくCD化されたわけだが、それは生前に契約していたColumbiaからではなく、Wounded Bird Recordsという無名レーベルから。捨てる神あれば拾う神ありって感じですね。
さて、「Don Ellis At Fillmore」は 1970年6月のフィルモア・ウェストでのコンサートを収録している。正確な日付は調べればわかるのだろうが、同日の出演者は他に誰だったのかな?
70年夏のサンフランシスコということで、演奏は熱いです。サックスは唸りを上げ、リズムは狂おしい。ドン・エリスというとよく“変拍子”が特徴として挙げられるが、頭でっかちでノレないタイプのそれではない。複雑なリズムに心が踊る。
ドン・エリスのトランペットがこれまた強烈。トランペットの音色をリング・モジュレーターやエコー・マシーンで加工し、混沌や荒涼とした情景を描き出している。
一番の聴きモノはやはり "Hey Jude" のカバーだろう。まるでピカソのキュビズムの画のように解体・再構築している。こんな "Hey Jude" は聴いたことがない。
ドン・エリスの音楽は、他のビッグバンド・ジャズ 例えばデューク・エリントンやカウント・ベイシーのそれのように完璧な音楽では決してない。むしろスキだらけ。でもそこがロック的で、突発的におとずれる熱狂が刺激的だ。