偶然性の音楽の知識
偶然性の音楽(ぐうぜんせいのおんがく、英語:chance operation music)はジョン・ケージの考案した現代音楽の形式である。伝統的西洋音楽の閉じられた形式に反発したケージは、開かれた作品構造を模索し、1945 年以降、易経などの東洋思想に触発されてこの手法を見出した。この手法はしばしば騒音など、伝統的西洋音楽が排除してきた音素材と併用される。1958年のダルムシュタット夏季現代音楽講習会で世界的な注目を集めた。ケージの作品では、偶然性をもちこむために、サイコロを使用する例などがある。またケージの弟子であるフレデリック・ジェフスキの『パニュルジュの羊』では、演奏者が間違った場合でも演奏を途切れさせず続けることによって、演奏のたびごとに違う音効果をもたらすよう企図されるが、これも一種のチャンス・オペレーションといえる。後には「ハプニング」という言葉も音楽用語として生まれ、演奏・演技団体「フルクサス」などによって広められた。偶然性の音楽の手法は、ケージのほか、ノーマン・ブライソンらによっても使用されている。これらの作品のいくつかは演奏行為すら含まず、そういう作品は従来の概念の音楽とはかけ離れており、むしろ演技行為に近い。行為を説明する文章がタイプ打ちされた数枚程度の紙に書かれ、それを作品とみなすことから、タイピング・ミュージックとも呼ばれる。日本語ではチャンス・オペレーションを偶然性、ハプニングを不確定性と訳す事が多い。日本では一柳慧によって1960年代初頭にケージの偶然性の音楽が紹介され、多くの作曲家が偶然性の影響を受けるケージ・ショックと呼ばれる現象を引き起こした。またその後小杉武久が渡米し、アメリカ実験音楽界でハプニングのパフォーマンスに関わっている。偶然性の音楽そのものは現代音楽に特有の概念ではない。18世紀にはサイコロを使って作曲するための楽譜がいくつも出版されていたという(土田英三郎「骰子音楽と結合術の伝統」)。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト|モーツァルトの「音楽のサイコロ遊び」が彼の独自性や、(現代音楽につながるような)先駆性を指摘するために引き合いに出されることがあるが、これはモーツァルト以外のこの手の曲が忘れられたためである。チャールズ・アイヴズは、「ピアノ・ソナタ第1番(アイヴズ) |ピアノ・ソナタ第1番」において偶然性を取り入れている。
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