初来日からのお付き合いのエリック・ウィテカーをご紹介しよう。
番組のインタヴューで会ったのだが、初対面のご挨拶からぶっ飛んでいた。
最初から弾けてしたったせいか、まあ、悪友とでも言おうか・・・。
会話の全てがジョーク。
でもいい奴だ。
アメリカの若手作曲家の中で最も人気が高い。
いや、もう中堅かな・・・。
才能もある。
とにかく頭の回転が早く賢い奴だ。
彼の出現で吹奏楽のオリジナルがエンターテインメントになった。
「ゴースト・トレイン」、「ラスベガスを食い尽くすゴジラ」などが代表作。
ラスベガスの大学で学んでいる時にスランプになったそうだ。
「こんなラスベガス、無くなってしまえばいいのに・・・」と思って、ゴジラがラスベガスを滅茶苦茶に喰い荒すという発想で描いたと言う。
昨今、ゲリラ豪雨が日本各地で被害を及ぼしているが、彼の作品で、途中から雨が降り出し、やがて本降りになって行く様を描いた「クラウドバースト」と言う作品があるが、これも佳品だ。
但し、この作品はコンサートなどのライヴでやらなければ効果はない。
そして、会場が満席ならば効果絶大。
但し洪水にはご注意を・・・。
とにかく彼の作品は、独特の人間性が出てる訳だ。
エンターテイメント性の高い吹奏楽オリジナル作品が多い。
でももっと多いのは合唱曲など「歌もの」。
嫁さんが声楽家だからね・・・。
近年は、世界中を飛び回り、指揮活動もしている。
今度はいつどこで会うのだろうか・・・。
今日はオランダのマエストロ、ピーター・ヤンセン。
オランダは小さい国なのに2千団体以上の吹奏楽団がある。
加えて2千団体以上のブラスバンド(金管バンド)がある。
アマチュア・ジャズ・バンドもオーケストラも千団体以上あるそうだ。
音楽レヴェルの高い国にあって、その頂点に立つのはオランダ王立海軍海兵隊バンドとコンセルト・ヘボウ管弦楽団ではないだろうか・・・。
海兵隊バンドの隊員の言葉を借りると「オランダの一級品音楽家と共に演奏できるのは最高の名誉だ。」と。
入隊オーディションは厳しい!
クラシックのコンチェルトとジャズ・アドリブ演奏。
つまりオールマイティーな演奏家でないと務まらない。
競争率は50分の1と聞く。
こんなメンバーを率いるのがピーター・ヤンセンである。
ただの軍楽隊の指揮者だと侮るなかれ。
オランダ国民は皆彼の名前を知っている。
1956年2月29日、オランダのヘールで生まれた。
ピアノと打楽器を学び、在学中から一流オーケストラの打楽器奏者のオーディションに合格している。
40歳にして、オランダ最高峰のオランダ王立海軍海兵隊バンドの音楽監督を務めることになった。
指揮者としての才能も溢れ、「吹奏楽の魔術師」と異名をとるほどだ。
「そつが無い」と言うのは上手いことだろうか・・・、いや違う。
「マイナスが無い」と言う意味だから、「プラス」があるかどうかではない。
減点が一つも無い演奏はコンクールでは強いかも知れないが、必ずしも心を打つ演奏とは限らない。
そつが無い上にいい所が多いバンドの演奏を聞いた。
それがオランダ王立海軍海兵隊バンド。
クラシックだろうがポップスだろうが、ピタッとツボにはまってくる音楽を聞かせてくれた。
聞いている方はご機嫌この上ない!
コンサート・ホールも立錐の余地もないほどの超満員だった。
アメリカ空軍もいいが、ギャルドもいいが、彼が率いるこのバンドの存在を忘れてはならない。
リハーサルから本番終演まで見学させて頂いた。
練習は一見大雑把に見えるが、短く要所要所に端的な指示を出す。
無駄に演奏させることはない。
だからリハが短いこと短いこと・・・。
でも団員との信頼関係があるので、一抹の不安もない。
もちろんコンサートは最高の出来だった。
ピーター・ヤンセンは凄い指揮者だ!
楽屋での歓談も楽しかった。
今日はイギリスのピアニストでもあり作編曲家でもあるゴフ・リチャーズ。
まだ吹奏楽ファンには馴染みが薄いかも知れないが、ブリティッシュ・スタイルのブラスバンドをやっている方にとっては知らない人はまずいないだろう。
「カントリー・シーン」「シルヴァー・マウンテン」「コーリング・コーンウォール」など美しいメロディーと味のあるサウンドを作り上げる作曲家である。
イギリス国民楽派かと思えば、ジャズ・フィーリングいっぱいの作品も数多い。
元はと言うとジャズ・ピアニスト。
ジャンルを越えて彼の作品は一段とハイセンスだ。
初対面の時、自己紹介をしたら我が番組の事は既に御存知。
以前イギリスの専門誌に、我が番組「バンドワゴン」が紹介されたことを覚えていてくれた。
彼は画家のように五線譜の上に遠近法で音楽を描く。
特にサスペンド・シンバルなどの打楽器の使い方が効果的で、ゾクゾク、ワクワクしてきます。
棒振るのも苦労しますよ。
彼の作品は、いわゆる「歌う」部分が多いので、どうしても気持が入りすぎちゃって、やる度にテンポの揺らし方が変わってしまう。
本番では指揮者と団員との間に異様な緊張感が走ります。
きっと皆さん心の中では、「練習と違うじゃん・・・」。
そんな時、指揮者は言い返したい。
「だって練習と本番は、気分が違うもん・・・」


