心室性頻脈
【定義】
心室性期外収縮が連続して3拍以上認められ、rateが 120 bpm以上
【電気生理】
・リエントリーの形成
傷害された心筋周囲の虚血や線維化部位に回路が形成される→電気軸の異常
・心筋の自動能の亢進
【心電図所見】
・QRS幅
一般論として、broad QRS(特に0.16 sを超える)は心室起源!ただし、例外あり、後述
ヒス-プルキンエの近位にて生じた場合はQRS幅は比較的短い:脚枝頻拍では 0.11-0.14 s
・形状
左室由来→右脚ブロックパターン
右室由来→左脚ブロックパターン
心室中隔由来→左脚ブロックパターン
・rateとリズム
rate:120-300 bpm
リズム:整orほぼ整(差は<0.04 s)
・電気軸
-90°~-180°の電気軸は通常の脚ブロックでは生じないので心室頻拍を強く疑う
心尖部由来ではaVRのQRSがpositiveになる
40°以上の右軸or左軸への変化は心室頻拍を示唆する
・心房との独立性
A. 房室解離:心房のrateは心室のrateより遅い(ただし1:1伝導のこともある)
心拍毎の違い(特にSTセグメント)はP波の独立性の可能性を示唆する
B. Capture beat:頻拍時にも通常の伝達系を介して心房の刺激が入ることがある
変行伝導を伴う上室頻拍あまり頻度は高くない。
C. Fusion beat:通常の伝達系由来の波と心室由来の波が融合したもの
心室の心筋が部分的にはヒス-プルキンエ系を介して、部分的には心室が発生源の刺激を介して脱分極すると、心電図上ではQRSは正常波と頻拍波の中間の形態を示す。Capture beatと同じくあまり頻度は高くない。
D. 胸部誘導すべてでQRSが陽性陰性のどちらかに優勢
positive:頻拍の起源は後壁←脱分極の波はすべての胸部誘導それぞれに向かう向き
negative:頻拍の起源は前壁←脱分極の波はすべての胸部誘導それぞれから離れる向き
broad QRSの頻脈を認めたら心室性か上室性か鑑別!
①脚枝頻拍:頻度は高くない
発生源は左脚後枝(時に左脚前枝)→部分的にヒス-プルキンエ系を介して刺激が伝えられる
QRSは右脚ブロックパターン
V1誘導で小さなQ波を伴うことがある
V6誘導で深いS波を認めることがある
後枝由来では左軸偏位
前枝由来では右軸偏位
②右室流出路起源特発性心室頻拍:若年者に多
発生源は右室流出路で、刺激は下方へ伝達される
カテコールアミンの放出、心拍数の急激な変化、運動によって誘発される
β遮断薬やCa拮抗薬が有効→上室性頻拍と誤診
右軸偏位
左脚ブロックパターン
③Torsades de pointes("twisting of points")
多形性心室頻拍の一種
洞調律時にはQT間隔は延長し、著明なU波が認められる
④多形性心室頻拍:Torsades de pointesよりはるかに頻度は低い
Torsades de pointesと異なり、洞調律時のQT間隔は正常
持続すると血行動態は不安定化する
心室細動に移行しやすい
不整なbroad QRS頻拍でQRSの形態は様々という点で早期興奮(副伝導路)を伴う心房細動との鑑別が必要である。
⑤変行伝導を伴う心房頻拍
房室結節で遅延・ブロックが起こるためにbroad QRSになる
参考文献
Broad complex tachycardia—Part I:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1122646/
Broad complex tachycardia—Part II:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1122709/