「私にとってバッハは音楽や芸術ではない。毎週日曜に子供の頃から親に連れられて教会で聞くもの。生活の一部であり、考え方の軸になるもの。」

そんなことをフランス人同僚が言ってました。ロックやヘビメタが大好きでクラシック音楽聞かないのにやたらとバッハに詳しかったから聞いたのです。

 

そんな文化背景を持つヨーロッパ、羨ましいと思いました。

が、自分にとって答えは簡単に見つかりました。あまりにも自分の中に溶け込んでいて意識さえしなかったのです。

ジョン・ウイリアムズ。彼は私にとって音楽でも芸術でもなく、自分を育ててくれたもの。自分の中に常にいていつも勇気をくれ背中を押してくれるものです

 

そんなジョン・ウイリアムズ。スターウォーズの世界が地球に降りてきました。それも日本、東京。

それも気軽な雰囲気のガラコンサートではなく、正史9話のストーリーに沿ったもの。私のようなジェダイにとって行かないわけにはいきません。

語り部はボストンポップス。もともとボストン交響楽団のオフシーズンでの「プロムナードコンサート」が「ポピュラーコンサート」となり「ポップス」へ。

それ自体が有名になり、ポップス専用のオケが誕生しました。これが「ボストン・ポップス・エスプラネード・オーケストラ」。ジョン・ウイリアムズも同オケの常任指揮者を13年勤め、彼の作品をもっとも多く演奏しておりガチ・正統派。

 

ここでは吹き替え版の声優さんが演奏と交互にストーリーを語ります。まさにバッハのミサのスタイル。

42年間かけて作り上げた壮大な作品、全部通すと13時間にもなるものを2時間にまとめたので無理は出ました。

メインタイトルが響き、ピッコロのソロになってから突然演奏停止で解説開始。えええ?

また「ダースヴェイダーがルークの腕の中で静かに息を引き取り・・・」の後で「森林での戦い」になったり、

銀河系に平和と静寂が訪れた・・・と語りながら「レジスタンスのマーチ」に続いたりと変な流れもありました。

演奏の余韻を楽しむ数秒も惜しいのか曲が終わった直後に解説をいれたり、最後の方では演奏にかぶせて話をしたりと純粋にジョン・ウイリアムズの世界に入っている自分には余計な演出でした。

一緒に来た連れも「解説いらないよね」と言っていたし、途中から解説をすぐには入れまいとして曲間で拍手が起こったのもそうかと思います。

またどんな事情だったのかわからないのですが、一部の曲、特にEp.6 ジェダイの帰還の曲はすべて吹奏楽コンクールのような細かいカットがされてました。日本人チューバ奏者の圧倒的に素晴らしかった「ジャバ・ザ・ハット」これはフルバージョンで聞きたかったです。でも、曲中で帝国軍が乱入したり発光する弓で弦楽器弾いたりとかの演出もなくジョン・ウイリアムズの世界に入れたのは良かったです。Ep.1から連続して聞くとアナキンのテーマから少しずつダースヴェイダーのモチーフが現れ始め、次第次第に形になってEp.5突入するのは正史通りの流れで演奏からこそぞくぞくします。また作曲順(映画の公開順)がEp.46そして13、最後に7-9なので作曲の手法もそれぞれ違っていたのも興味深かったです。

 

演奏。嗚呼!これが本家、これが正統的なスターウォーズか。素晴らしすぎて涙がでました。金管楽器がパワフルに吹く印象の強いスターウォーズですが、トランペットを中心に丁寧に美しくまるでコーラスのように高貴に響かせます。ジェダイの楽器ホルンが咆哮する部分も音量をコントロールし吠えすぎないような演奏でした。第一部の最後は「ダースヴェイダーのマーチ」。ここでもアンコールなどで見られるような歓声もなく、一部最後のメインの曲として厳かに演奏されました。ああ、あのテーマの最初はマルカートでなくテヌートなのですね。ヨーダのテーマも気軽に聞く軽い演奏ではなく、この叙事詩の教理を説いたような荘厳な響きでした。

レイア姫のテーマ、ジェダイのテーマ、ルークとレイアに登場する美しいホルンソロ、圧倒的でした。登場するキャラのライトモチーフとしてのテーマでしたが、それを超えて美しく歌い上げてました。フルートもしかり。最初に爆発的な拍手が起こったのは「酒場のバンド(Cantina Band)」。サックスを入れずオーケストラがフルに演奏するのですがなんというご機嫌で軽快なノリ。ボストンポップスならではでしょうか?

あ!そういえばコントラバスが全員フレンチ・ボウってここで気づきました。

美しい楽曲でありながらなかなか単独では取り上げられにくい「極秘作戦(The Rebellion is Reborn)」。9話の中で唯一愛のテーマと言われるアクロス・ザ・スターズ(アナキンとパドメの禁じられた恋のテーマ)、悲しいオーボエから始まりイングリッシュホルンで締めくくる音楽

 

そして42年間の叙事詩を締めくくる「スカイウォーカーの夜明け(The Rise of Skywalker)」。これが聞けて幸せでした。自分の人生を導いてくれた世界がこれで終わりました。

アンコールは、なし。なくてよかったです。曲が流れるたびに自分の当時の思い出と重なりました。

自分が生きているのはジョン・ウイリアムズのおかげなんだとあらためてこのミサに参加して思いました。

 

久しぶりの長文です、お付き合いありがとうございました。今回はオチもネタもグルメもありません。May the force be with us forever