大学2年のいつだったか自分はヤマハ銀座店にいました。何の用事で国立から銀座に行ったのか忘れましたが、当時地下一階の楽譜売場でなんとなく目にしたこの雑誌に引き込まれました。
伝統的なウィーンフィルの管楽器。工房を引き継ぐ人が減り危機に面している時のストーリーです。
当時も今も楽譜売場はBGMを流さず静寂の中でウィーンフィルと日本の技術者が必死になって格闘している様子が映ります。活き活きとまるでそこで映画を観ているかのような描写でした。
気がついたら2時間くらい経っていて怒られなかったので銀座に来る度にこのストーリーを読んでました。(雑誌買えよ)

自分の身近な楽器メーカーがこんな事をやっている。この雑誌があったから就職先としてこの会社を選びました。

入社後、さまざまな機会でウィーンフィル開発物語に出てた人と会いました。あ!この人知っている。雑誌に出てた通りの顔だ、と先輩社員を見てました。

フランスに駐在し、定期購読は止めずにいると雑誌で紹介された綺羅星の管楽器奏者に会え、それでも事前に記事を読んでいると初対面とは思えませんでした。記事のコピー(すみません!)を渡すと相手もキラキラと、なんて書いてあるのか?と身を乗り出して仲良くなるきっかけでした。

そして留学生のみなさん。皆さんとても個性的で良く騒ぎ、良く飲み、極めて真面目に練習されてました。15区の焼き鳥屋でよく大騒ぎしてたっけ。コンクールなどで彼らが活躍する度に編集部佐藤さんに連絡をとり記事にしてもらうのがこの上ない楽しみでした。この雑誌のおかげでいろいろな方々とお付き合いさせていただきました。

今は音大、ソリスト、オケなど各方面で活躍されている方々と若い頃知り合えたのは光栄です。

最終号がついに自宅に届きました。
寂しいですが、自分の進路を決めてくれ、またフランスを中心に私の人生をここまで豊かにしてくれた事に感謝しかありません。銀座でこの雑誌を読み、今同じところで仕事しているものこの縁でしょう。

佐藤拓さん、お疲れ様でした。どこかでゆっくりお礼をさせてください。