「ザ・フォーギブン 襲撃地帯」('22) | Marc のぷーたろー日記

「ザ・フォーギブン 襲撃地帯」('22)

 

2007年にニュージーランド東部の先住民マオリ系住人が暮らすルアトキ集落で、警察特殊部隊による行き過ぎた強制捜査が行なわれた事件を再現したアクション映画です。主演はクリフ・カーティス、共演はジェイ・ライアン、マヌー・ベネット、タメ・イティ、シモーヌ・ケッセル、リア・パキ他。

 

この映画を観るにあたって注意しなければならないのは、2007年に実際に起きた事件を再現していると謳いつつも、映画の中で以下のように明言している点です。

この作品は警察による襲撃を再現したものではない

This film is not a recreation of the police raids against the people of Tūhoe.

 

被害者側の認識である

It is a response.

そして、被害を受け、逮捕された活動家タメ・イティ氏が本作のプロデューサーの1人となり、本人役で出演していることにも注意が必要です。

 

実際には怪我人も死傷者も出ていないにもかかわらず、必要以上に事件を大きく見せるために暴力描写を「捏造」していることには大いに疑問を感じます。

 

確かに、この事件は警察の大失態で、責められて然るべきものではありますが、この事件のきっかけとなったイティ氏による銃器の不法使用については最終的に有罪判決が確定し、収監もされており、一方的に警察だけが悪いとは言えないのです。

 

だからと言って、この映画が無意味かと言われると、それは「No」です。

 

この映画で描かれているように、思い込みや勘違いが取り返しのつかない悲劇につながる可能性があることは間違いなく、そんな悲劇を生まないようにするための啓発としての意味はあると思います。ただ、それならばきちんと「実話から着想を得たフィクションである」と明言すべきであり、敢えてそうは明言しないところには映画製作者の不誠実さを強く感じます。