
「悪は存在せず」('20)
4話オムニバス形式でイランにおける死刑制度の是非を問い、イランでは上映禁止処分を受けたものの、第70回ベルリン国際映画祭で金熊賞(作品賞)に輝いたドラマ映画です。出演はエーサン・ミルホセイニ、シャガイェグ・シュリアン、カヴェ・アハンガル、サラール・ハムゼー、マフタビ・ゼルヴァティ、バラン・ラスロフ他。
この映画の作り手は死刑制度そのものにも反対しているように見えますが、映画の内容自体は死刑制度そのものというよりも、その運用の仕方、特に「死刑を執行する者」の問題を厳しく指摘し、観る者に「あなたならどうする?」と問いかけるものでした。
イランの成人男性は、心身の障害などの特別な理由がない限り、兵役の義務を果たさなければ、パスポートも運転免許も取れず、実質的に社会人としては生きていけないということ。その上さらに、任務として「死刑執行」を命じられることもあるということ。これらは全く知らなかったことなので驚きました。
4つの短編のうち3つがその「兵役中の任務として死刑執行」を題材にしており、また4つの短編の主人公が同じように「死刑を執行する者」でありながら、それぞれに立場も考え方(受け止め方)も異なっているのは映画全体としてバランスが良く、オムニバスの形式を活かしていて![]()
ヘビーな題材ですが、イランの現実の一面を知ることができる良い教材だと思います。