「飢餓海峡」('65) | Marc のぷーたろー日記

「飢餓海峡」('65)

 

実話をもとにした水上勉さんの同名小説を内田吐夢監督により映画化した社会派のミステリ映画です。出演は三國連太郎さん、左幸子さん、高倉健さん、伴淳三郎さん他。

 

Wikipedia「飢餓海峡」

 

とても有名な映画なのですが、これまで機会がなくて見逃していたのをようやく観ることができました。

 

物語の舞台は1947年(昭和22年)と1957年(昭和32年)、この映画が公開されたのは1965年(昭和40年)。この時代背景を理解した上で観るべき映画だなぁと。

 

親孝行で真面目で善良だった青年はどうしてこうなってしまったのか。

 

ヒロインは1度会っただけの男への感謝の気持ちを何故そこまで強く、もはや「ストーカー」レベルで持ち続けていたのか。

 

そこに「貧困」があることは誰にでも理解できるでしょう。しかし、現代人がその「貧困」を本当にどこまで実感として理解できるかというと、それはなかなか難しいのではないかと思います。

 

映画の中で「貧困」は台詞で語られるだけで、それをリアルに描写するシーンは全くありません。それは映画が公開された当時は、「貧困」をリアルに経験した人が世の中に大勢いて、敢えて描く必要などなかったからなのでしょう。

 

このあたりの「脳内補完」が充分にできないと、登場人物の心の動きは理解できないでしょうし、この映画が描きたいものの半分も伝わらないのではないでしょうか。

 

その意味で、現代人にはちょっと「難しい映画」なのかなと感じました。

 

他にも、「女から搾取する存在」として描かれることの多い、置屋の主人や女将を面倒見の良い善良な人物として描いているのも印象的で、それはとても「リアル」に感じました。