「アンナ・カレーニナ」('12) | Marc のぷーたろー日記

「アンナ・カレーニナ」('12)

 

これまで何度も映画化されて来たトルストイの同名小説をキーラ・ナイトレイ主演で映画化した作品です。共演はアリシア・ヴィキャンデル、ジュード・ロウ、アーロン・テイラー=ジョンソン、マシュー・マクファディン、ケリー・マクドナルド、オリヴィア・ウィリアムズ、

Wikipedia「アンナ・カレーニナ (2012年の映画)」

実に観応えがありました。

これまでの数ある「アンナ・カレーニナ」の映画化作品のうち、グレタ・ガルボ主演の1935年版 (トーキー版) とヴィヴィアン・リー主演の1948年版、ソフィー・マルソー主演の1997年版の3作品は観ているので、それらと何が違うのか、21世紀の今、再映像化する意味はどこにあるのか、それを見極めたくて観てきたのですが、かなり満足 (^^)v


まず、主演女優について。

過去の作品ではいずれも当時を代表する「美人女優」が演じており、21世紀の今、この役をキーラ・ナイトレイが演じるのは当然と言えば当然。彼女ありきの再映画化企画と言っても過言ではないと思います。彼女の華やかな美貌が全編通して画面全体を煌びやかなものにしています。

他の出演者に目を向けると、何と言っても主人公の相手役ヴロンスキーを演じたアーロン・テイラー=ジョンソンの超絶美青年ぶりには衝撃を受けました (@o@)

「キック・アス」('10) で冴えないオタクな主人公をかなり「キモく」演じていたのに、髪型や衣裳、体格の違いで完全な別人に変身。文字通り、「少女漫画から飛び出した」ような美しい貴公子ぶりに、女性ファンが急増するのは間違いないでしょう。ただ、演技をしていないときの姿は極めて「フツメン」なので、現代劇よりも史劇の方がサマになるタイプなのかもしれません。

また、主人公の夫カレーニンをジュード・ロウに演じさせているのも新鮮。10年以上前なら、彼がヴロンスキーを演じていたと思うのですが、そんな彼にカレーニンを演じさせているところに、本作の特徴が集約されているように感じました。

これまでの映像化作品では、尺の都合もあるのでしょうが、カレーニンを一方的に冷徹な夫として描くことで、主人公の不倫を正当化するような意図が感じられたのですが、本作のカレーニンは、確かに厳格な人物で、一見すると冷たい夫に見えますが、その内面は実に寛容で心優しい人物。妻アンナを愛するが故に最後には彼女を許し、彼女が別の男との間に生んだ娘を自分の子として育てたわけですから。そのため、本作では主人公の不倫は決して正当化されていないですし、「狂恋ゆえの暴走」という側面がかなり強調されています。

グレタ・ガルボとヴィヴィアン・リーの「アンナ・カレーニナ」がどちらも浮世離れした美男美女による美しい (一種のファンタジーとも言える) 悲恋物語として、またソフィー・マルソーの「アンナ・カレーニナ」が現実味のある美男美女による生々しい愛欲の物語として表現されていたのに対し、本作はその両面を兼ね備えているように感じます。キーラ・ナイトレイとアーロン・テイラー=ジョンソンという浮世離れした美男美女による美しい悲恋物語の体裁を見せながら、ストーリーや演出では、生々しい愛欲の物語として表現されているのです。

出演者としては他に、以前「プライドと偏見」('05) でキーラ・ナイトレイの相手役を演じたマシュー・マクファディンが、主人公の兄オブロンスキーをユーモラスに演じていて印象的。彼に対しては、どちらかというとむっつりした堅苦しいイメージがあったのですが、大きな目をくるくると動かす表情が実にコミカルで、重苦しい雰囲気のある本作で貴重な「息抜き」的存在になっており、彼に対する印象が大きく変わりました。


また、演出面も新鮮。

舞台劇そのままに、セットが観客の見ている前で入れ替わり、閉ざされた空間の中で展開するシーンを中心にしていながら、ところどころで屋外で撮影したシーンを挿入するなど、演劇と映画を融合したような特殊な演出はかなり新鮮。舞台劇を見慣れていない人には不自然にしか感じられないかも知れませんが、閉鎖的で建前が全ての社交界のシーンを閉ざされた、虚構性の高い舞台空間で演劇的に表現し、逆に自由な魂を表現するシーンを開放感のある屋外ロケで映画的に表現するなど、分かり易い使い分けがグッド!


更に舞踏会のシーンのダンスも印象的。

実際に19世紀のロシア社交界で踊られていたダンスではなく、この映画のためにオリジナルで作られた振付けなので、はっきり言ってしまうとかなり変ですし、不自然。

ただ、このシーンがアンナとヴロンスキーの不倫の恋が燃え上がる直接のきっかけであることを強調するという意味では、この不自然なまでに官能的な (振り付けの) ダンスに意味があることは確かですし、2人の燃え上がる恋情が生々しく表現されていて、かなりのインパクトがあります。アンナ同様、このシーンでヴロンスキー (≒ アーロン・テイラー=ジョンソン) に恋してしまう女性は少なくないでしょう (^^)


とにかく、これまでに「アンナ・カレーニナ」の映像作品を何かしら観たことがある人に、是非とも「違い」を確かめる意味でお勧めしたい作品です (^^)


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