「名もなく貧しく美しく」('61) | Marc のぷーたろー日記

「名もなく貧しく美しく」('61)

名もなく貧しく美しく [DVD]/小林桂樹,高峰秀子,島津雅彦
¥4,725
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終後の混乱期を聾唖同士の夫婦が健気に支えあいながら生きて行く姿を描いた松山善三さんの初監督作品です。主演は高峰秀子さん、小林桂樹さん、共演は島津雅彦さん、原泉さん、草笛光子さん、加山雄三さん他。

Wikipedia「名もなく貧しく美しく」



タイトル通りの「名もなく貧しく美しく」生きている夫婦の絵に描いたような「健気」な姿を描いた映画でした。

名シーンと呼ばれている電車の中でガラス越しに手話で会話する2人のシーンには泣かされました (ToT)

主演の高峰秀子さんと、ひたすら優しい夫を演じた小林桂樹さんの 2人が、生身の人間の温かみを感じさせる魅力的な演技を見せてくれて、すっかり魅了されました。


それだけに終盤の展開が辛過ぎます…。

何故、あのような終わり方にする必要があったのでしょうか。もちろん、日本人が本来持っている「不幸な運命でも真正面から受け止めて前向きに生きていく」大らかさを表現していることは分かりますが、それにしても残酷過ぎると思うのです。一応、前向きなエンディングにはなっていますが、戦争中に助けた子供がきっかけになっているだけに後味は良くありませんでした。


ただ、この映画を観て、昨今の過度な「昭和30年代の美化」に対するアンチテーゼになるような気がしました。確かに昭和30年代の日本には今の日本にはない「美しいもの」が沢山ありました。しかし同時に、この映画で描かれているように、無知から来る偏見や差別は現在の比ではないくらい惨たらしかったという「負の面」があったこと、その事実を当時の映画はしっかり描いています。

何かと「昔は良かった」と懐かしんで、必要以上に現在を否定してばかりいる人には、こういう映画を観て欲しいです。その上で「それでもあなたは本当に昭和30年代の全てが今よりも良かったと言えるのですか?」と問い質したいです。