「蟹工船」('09) | Marc のぷーたろー日記

「蟹工船」('09)

蟹工船 [DVD]/松田龍平,西島秀俊,高良健吾
¥4,935
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プロレタリア文学の代表作とされる小林多喜二の「蟹工船」を松田龍平さん主演、SABU さん監督・脚本で映画化した作品です。共演は西島秀俊さん、高良健吾さん、新井浩文さん、柄本時生さん他。

Wikipedia「蟹工船」



なるほどねぇ…。


21世紀の今、80年も前の「プロレタリア文学」を映画化することにどんな意味があるんだろうと興味があって観てみたのですが、「こう来たか」という感じ。

一応、設定は原作通り昭和初期の日本ですが、映像から受ける印象は「無国籍」「無時代」な雰囲気。セット、衣装、照明、セリフ、いずれも舞台劇のようですし、1つの 1つのシーンも長めなので、そのまま舞台劇にできそう。というよりも、むしろそのまま舞台劇にした方が「いい作品」になったように思います。

映画として観ると、あまりに浮世離れしていて、本来のプロレタリア文学としての力強さやギリギリの切迫感が感じられず、これを「蟹工船」と呼ぶのは原作者に失礼なレベル。

浮世離れした世界観は、映画製作者の意図通りなんでしょうし、これくらいアレンジした方が、21世紀の若者にも受け入れられると思ったんでしょうが、それは違うと思います。むしろ 21世紀の今だからこそ、原作の持つ「誰もが目を背けたくなるほどの生々しい悲惨さ」を表現すべきだったと思うのです。

最終的には「青春映画」のようなエンディングで、このアレンジの意図も分かりますが、「甘ちゃん」過ぎて中学生でも「世の中、舐めてんの?」と思うでしょう。

そして納得いかなかったのは、悪役である「監督・浅川」を西島秀俊さんが演じていたこと。彼の起用は、主演に松田龍平さんを起用しているのと同様、浮世離れした世界観を演出するのに大いに貢献していますが、せめてこの役くらいはもっと年長でコワモテな役者さんに演じて欲しかったです。確かに、西島さんは西島さんで冷酷非情な悪役自体には合っていますが、「蟹工船」の浅川ではないです。


映画としては「なんだかなぁ」という感じでしたが、お気に入りの新井浩文さんが観られたので、それだけで一応は満足しています (^^)v