「休暇」('08) | Marc のぷーたろー日記

「休暇」('08)

休暇 [DVD]
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死刑囚を収容する拘置所を舞台にした人間ドラマです。主演は小林薫さん、西島秀俊さん、共演は大塚寧々さん、大杉蓮さん他。第五回ドバイ国際映画祭コンペティション審査員特別賞を受賞しています。




見応えがありました。


もっと単純な「死刑制度反対」を謳った映画かと思ったんですが、そういう「何らかのテーマ」を声高に訴える映画でなかったのがとても良かったです。

終始一貫して淡々と「死刑」というものがどのように執行されていくのかを、主人公である拘置所の刑務官 (小林薫さん) を通して描いています。もちろん主人公の内面も描かれますが、踏み込んだ形ではなく、比較的あっさりめな表現に抑えられています。

とにかく「死刑」が執行されていくサマを客観的に見せることで、観る側に「考えさせる」のが目的なんだと思います。

ただ、そのために主人公の婚約者に対する気持ちがどこにあるのかが分かりづらかったのは少し残念でした。彼が結婚後の 1週間の「休暇」を取るために、誰もが嫌がる死刑執行時の「支え役」に志願した理由、心の内については、婚約者の息子との関係からはうっすら見えてくるものがあるんですが、そこに婚約者が不在に見えるんです。とは言うものの、小林薫さんの抑え目な演技が、観ている側の想像をいろいろと掻き立てるので、むしろ明確に「こうだ」と示さない方が良いのかなと思ったりもします。

また、この映画で印象的だったのは死刑囚役の西島秀俊さんの演技。序盤はいつもながらの「棒読み&無表情」演技で、これはこれで死刑に対して達観しているように見える役柄に合っていましたが、終盤、死刑が執行されると知って以降の演技は、これまで僕が観たことがない西島さんの演技で、この秀逸さには震えが来ました。

彼の終盤の演技を観るだけでも充分に価値があると思います。


重苦しい内容で、決して「面白い」映画ではありませんが、見応えのある映画です。



お勧め。