「ヒートアイランド」('07) | Marc のぷーたろー日記

「ヒートアイランド」('07)

ヒート アイランド
¥2,953
Amazon.co.jp

垣根涼介さんの同名小説を、城田優さんの主演で映画化したアクションサスペンスです。共演は木村了さん、北川景子さん、高岡蒼甫さん、伊原剛志さん、細川茂樹さん他。

映画「ヒートアイランド」公式サイト

とにかく、


単純に面白い!!


観終わった後に、なぁ~んにも残りませんが、娯楽映画としてはなかなかの拾い物。PG-12 に指定されているほど暴力描写が多いので、万人にお勧めとは言えませんし、真面目に冷静に観ちゃうと、登場人物たちの行動に不快感を感じる部分が多いことは確かなのですが、次々とスピーディに展開するので、細かいことを気にせず、また深く考えずに単なる「娯楽映画」として観れば、かなり楽しめるんじゃないかと思います。

2006年の夏にエキストラを使わずに渋谷のセンター街などでゲリラ撮影したロケ映像は、臨場感たっぷりで迫力満点。ストーリー自体は無国籍な雰囲気なのですが、そんな物語が現実の渋谷の街で起こっているかのように思わせる「臨場感」が、より一層映画のドキドキ感を盛り上げています。

そしてこの映画で最も感心したのは脚本の巧さ。

脚本を担当した「サタケミキオ」さんは、「鹿男あをによし」('08) で大阪女学館の剣道部顧問・南場先生を演じた俳優・宅間孝行さんと同一人物。俳優業とともに脚本家「サタケミキオ」として「花より男子」シリーズを担当するなど、今売れっ子の脚本家です。

Wikipedia「宅間孝行」

この脚本の巧さは、2時間に満たない映画でありながら、多くの登場人物を明確に描き分け、しかも張った伏線をきちんと最後に拾ってまとめるという、プロの脚本家として当たり前と言えば当たり前のことをきっちりこなしていること。ラストのオチはちょっと都合良過ぎ? と思えなくもないですが、すっきりとよくまっています。

とにかくこの映画は登場人物が多く、メインキャストだけでも、これだけ↓出てきます (^^)

渋谷のカリスマ集団ギルティ (城田優さん、木村了さん、北川景子さん、小柳友さん、浦田直也さん、鈴木昌平さん)

裏金強盗団 (伊原剛志さん、細川茂樹さん、松尾スズキさん)

暴力団 (豊原功補さん、高岡蒼甫さん)

関西ヤクザ (近藤芳正さん)

南米マフィア (パパイヤ鈴木さん)

これだけ多いと普通なら充分に描き分けできないものですが、それぞれのキャラクターが濃くはっきりしていて、しかも全員がハマリ役なので、個々のキャラクターが観ている側に鮮明にインプットされるようにできています。

特に、伊原剛志さんの渋いカッコ良さは抜群ですし、豊原功補さんと近藤芳正さんのハイテンションな演技やパパイヤ鈴木さんの不気味さはインパクト大です。また高岡蒼甫さんの好演も見逃せません。

ただ、とても残念なのは、これだけの中堅・ベテラン俳優が濃いキャラクターを演じると、どうしても若手俳優の影が薄くなってしまい、本来メインであるはずのギルティのメンバーの印象があまり残らないんです。

DVD には特典映像として、公式サイトでネット配信されていた、ギルティの 6人が集まるきっかけ(?)になったエピソードをまとめた「エピソード0」が収録されています。これを観ると、6人それぞれのキャラクターと背景がよく分かりますし、特に映画本編だけでは力関係が分かりづらかったリーダー・アキ (城田優くん) と参謀カオル (木村了くん) の関係も納得がいくと思います。映画では、カオルの存在が中途半端で単なるアキの子分のように見えてしまうところがあるのですが、「エピソード0」でのアキとカオルのやり取りを観れば、ギルティのリーダーは確かにアキだけれど、実務レベルで仕切っているのがカオルであることが分かります。

映画本編もそうですが、「エピソード0」で特に印象的なのは、共演の多い城田優くんと木村了くんの息がぴったりだということ。非常に対照的なイメージで、コントラストもいい。洋風で男っぽく、大柄でワイルドな城田優くんと、和風で中性的、小柄で繊細な木村了くんは並ぶと真逆のカラーなので、組み合わせていろんな役をやらせてみたくなります。
それにしても DVD のジャケット写真での木村了くんのうっとりしたようなエロい表情の意味が分からん (^^;;;
ギルティの他のメンバーとしては、今人気上昇中の北川景子ちゃんに注目。いかにもイマドキのギャル系のルックスにはあまり興味がないのですが、この役は非常にピッタリ。男ばかりのキャストの中で「もうけ役」だったとも言えますけど。そしてこの映画で良かったのは北川景子ちゃん演じるナオと他のメンバーとの間に恋愛要素が全くなかったこと。原作のナオは男で、このように映像化にあたって男性キャラを女性に変更することは一般的によくありますが、その場合は「不要な恋愛要素」の導入になることが多く、そして大抵うまく行っていません。それに比べると恋愛の要素が全くないというのが新鮮。北川景子ちゃんは確かに可愛いんだけれど、ちょっとボーイッシュなところがあるので、それが男たちの中にいて、しかも恋愛要素が全くなくても違和感を感じさせないのかもしれません。

因みにギルティのメンバーでプレイボーイのジュンを演じた小柳友さんはブラザートムさんの息子さんで、また巨漢のサトルを演じた鈴木昌平さんは本当に「元力士」だそうです (^^)


とにかく一気に突っ走るような映画で、ハラハラドキドキしたい方にはお勧めです (^^)v

でも観終わった後に何も残りませんので、その点はあしからず (^^)